【弁護士が解説】交通事故で高次脳機能障害と診断されたときに知るべきこと

2023年2月24日 10:00

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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この記事でわかること

  • 交通事故で生じる高次脳機能障害とは?
  • 交通事故で高次脳機能障害と診断されたらやるべきこと
  • 高次脳機能障害の慰謝料請求の内容
  • 高次能後遺障害の慰謝料請求は弁護士へ依頼

「家族が交通事故で高次脳機能障害になってしまった」

「交通事故で高次脳機能障害と診断されたらどうすればいい?」

 

このようなお悩みはないですか?

 

高次脳機能障害とは、交通事故などで脳に外傷を受けたことで障害が発生した状態のことを言います。

 

高次脳機能障害には様々な症状がありますが、大きく分けると以下の4つの症状を指します。

 

①記憶障害

②注意障害

③遂行機能障害

④社会的行動障害

 

こうした症状のうちどれか一つが生じるというよりは重複することが多く、症状の程度は一人ひとりで異なります。またこうした症状は事故や病気の直後に発生するとは限らず、しばらく経ってから現れることもあるので注意が必要です。

 

高次脳機能障害は一人ひとりで症状や程度が異なるため、治療やリハビリテーションによって症状が改善することもあれば、後遺症として残ってしまうこともあります。

 

もしも交通事故で高次脳機能障害と診断された場合、家族やご本人にできる事はいくつかあります。特に、症状の重さによって社会保障が受けられたり、交通事故で賠償金を請求したりすることも可能です。

この記事では、交通事故による高次脳機能障害はどんなものなのか、慰謝料などの賠償金はどうなるのかを中心に詳しく解説していきます。

この記事をお読みいただくことで、交通事故で高次脳機能障害と診断されたらどうするべきかがお分かりいただけると思います。ぜひこの記事を参考に高次脳機能障害への理解を深めていただければ幸いです。

1 交通事故で生じることのある高次脳機能障害とは?

この章では、交通事故で生じることのある高次脳機能障害について詳しく解説します。ここでは主に以下の3つのポイントについて解説します。

 

①高次脳機能障害とは?

②高次脳機能障害の主な症状

③高次脳機能障害は回復するのか

 

それぞれ見ていきましょう。

1-1 高次脳機能障害とは脳に外傷を受けたことで障害が発生した状態のこと

高次脳機能障害とは、交通事故などで脳に外傷を受けたことで障害が発生した状態のことを指します。脳に外傷を受けることで、通常であれば意識せずにできるような基本的な能力が失われてしまうのが高次脳機能障害です。

例えば高次脳機能障害では、以下のような症状が見られることがあります

 

・会話がかみ合わなくなった。

・理論的に話をすることができなくなった。

・怠け者になった。

・常にぼんやりするようになった。

・怒りっぽくなった。

・飽きっぽくなった。

など

 

以上のような例が交通事故前と後で変化が現れたときに、高次脳機能障害者を診断される可能性のある症状の一部です。このほかにも高次脳機能障害によって様々な症状が現れることがあります。

 

高次脳機能障害は目に見える障害ではないため、周りの家族や友人は障害に気付きにくいといった特徴があります。そのため、高次脳機能障害と診断されるのに時間がかかったり、診断された後に行うべき適切な対処が遅れたりすることもあります。

 

1-2 高次脳機能障害の主な症状

 

高次脳機能障害は、以下の4つに分類されます。

 

①記憶障害

②注意障害

③遂行機能障害

④社会的行動障害

 

症状は大きく分けると以上の4つですが、それぞれの障害がさらにいくつかの特徴を持つこともあります。ここでは行政が提示している4つを中心に見ていきましょう。

 

1-2-1 記憶障害

 

記憶障害は脳の記憶する機関にきたす障害です。例えば「覚える」という機能や「思い出す」といった記憶に障害が生じることで、以下のようなことが起こることがあります。

 

・ものの置き場所を忘れる。

・新しい場所を覚えられない。

・内容を間違えて覚えてしまう。

・同じことを何度も繰り返し尋ねる。

・嘘が多くなる。

など

 

1-2-2 注意障害

注意障害は、私たちが普段当たり前に持っている基本的な注意力に障害が生じることです。例えば、以下のような症状が当てはまります。

 

・集中できない。

・ミスが増える

・ぼんやりしている。

・ふたつのことを同時に行うことができない。

・作業を長く続けられない。

など

 

1-2-3 遂行機能障害

 

遂行機能障害は、ひとつの目的を達成するための能力に障害が生じることです。例えば、以下のような症状が当てはまります。

 

・段取りを立てられない。

・自分の立てた計画を実行できない。

・人からの指示がないと動けない。

・時間通りに動けない。

・ものごとに優先順位を付けられない。

など 

 

1-2-4 社会的行動障害

 

社会的行動障害とは、社会で生活する上で必要となる感情や行動のコントロールを行う能力に障害が生じることです。例えば以下のような症状が当てはまります。

 

・急に怒り出したり興奮したりする。

・暴力をふるう。

・急に泣き出す。

・自己中心的になる。

・思い通りにいかないことがあると大声を出す

など

 

これらは高次脳機能障害の症状の一部です。実際にはこのほかにも様々な症状があります。

 

高次脳機能障害を疑ったら必ず病院を受診しよう

高次脳機能障害かもしれないと思ったら、必ず病院を受診するようにしましょう。高次脳機能障害には決まった科が分かりにくいので、まずは交通事故の際に受診した医師に病状を伝えることをおすすめします。


高次脳機能障害の診断は難しく、専門的な判断が誰にでもできるとは限りません。


最終的にはできるだけ高次脳機能障害に詳しい医師に診てもらうことが一番ですが、まずは交通事故の際に受診した医師に頼り、それが難しい場合には普段かかっている内科でもいいので相談して状況に応じて専門医を紹介してもらうようにしましょう。

1-3 高次脳機能障害は回復する?

高次脳機能障害は人によって症状が大きく異なります。そのため、治療やリハビリテーションにより回復する場合もあれば、障害が残ってしまうこともあります。ただし、完治することは難しいというのが実情です。

 

障害が残ってしまう場合でも、リハビリテーションによって症状が回復したり進行を遅らせたりすることは可能です。

 

一般的には、発症してから年数が経ってリハビリを行う場合だと回復に限界があるとされています。発症してからなるべく早くにリハビリテーションを介入することが重要です。

 

2 交通事故で高次脳機能障害と診断されたらやるべきこと

 

この章では、交通事故で高次脳機能障害と診断されたらやるべきことについて詳しく解説します。ここでは、以下の2点について見ていきましょう。

 

2-1 【家族の方】高次脳機能障害の方との接し方を学ぶ

家族の方は、まず高次脳機能障害の方との接し方について学びましょう。高次脳機能障害は、障害を持った方の性格が変わってしまったり、記憶や認知の歪みが出てしまったりすることがあるため、特に生活を共にする家族の方の生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

 

障害の種類

接し方

記憶障害

・2つ以上のことを同時進行させない

・理解できているか声に出して確認してもらう

・本文は短く伝える

・メモやアラームを活用する

注意障害

・障害のある方の目を見てジェスチャーなどを交えて伝える

・一度に複数の指示を与えず、ひとつひとつ簡潔に伝える

・集中できる時間に合わせて作業としてもらう

・部屋を明るくする

遂行機能障害

・あいまいな指示を避け、具体的に伝える

・作業をパターン化させる

・ルーティンワークを行う

社会的行動障害

・不適切な行動については叱るのではなく、客観的にどう思われるのかを指摘する

・相手が興奮しているときは場所や話題を変える

高次脳機能障害について周りの方がしっかりと理解を深めることで、高次脳機能障害の方の症状や苦痛が和らぐことがあります。とはいえ、家族の方に過剰なストレスがかかることも問題です。

高次脳機能障害の方との接し方に関して、誰にでも当てはまる答えはありません。重要なのは、自分たちに合ったやりやすい方法を見つけることです。ご家族や周囲の方は、自身の心身の健康も考えながら接し方を工夫していきましょう。

 

2-2 高次脳機能障害で受けられる社会保険制度を利用する

 

高次脳機能障害と診断された方に向けた社会保障制度があります。


社会保障制度

内容

障害者手帳

障害の程度によって等級に分かれており、サービスを受けられる。

障害年金

症状や年金の支払い状況など要件を満たすと受給できる

障害福祉サービス

ヘルパーの利用やデイサービスの利用ができる


以上のように、高次脳機能障害に認定されることで様々な社会保障制度を利用できます。受けられる保障の内容や申請方法は自治体により異なる為、まずは高次脳機能障害情報・支援センターのHPよりお住まいの市区町村の高次脳機能障害相談窓口へお問合せください。 

高次脳機能障害情報・支援センターのHPで調べる

 

3 交通事故の高次脳機能障害の程度によって慰謝料も請求できる

 

交通事故で高次脳機能障害になってしまった場合、慰謝料を受け取れる可能性があります。具体的には、後遺障害等級を認定してもらうことで、等級に合った慰謝料の請求が可能です。


ここでは、交通事故の高次脳機能障害で請求できる慰謝料について詳しく解説します。

 

3-1 後遺障害等級とは症状の程度によって認定される等級のこと

後遺障害等級とは、交通事故などで負った後遺症の程度によって認定される等級のことです。1級から14級までがあり、数が小さいほど重い症状となります。


交通事故で負った怪我が後遺症として残ってしまった場合、その程度によって請求できる金額が異なります。後遺障害等級認定を受けないと、そもそも後遺障害慰謝料を請求することはできません。


後遺障害を認定されるためには、医師の診断書など様々な書類や手続きが必要です。交通事故の後遺障害に関して詳しい内容は「交通事故の後遺障害とは?|誰でも簡単にわかるようにプロが解説」で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

3-2 高次脳機能障害での後遺障害等級と慰謝料の相場

交通事故で高次脳機能障害になってしまった場合の後遺障害等級と慰謝料の金額について見てみましょう。まずは、以下の表をご覧ください。


等級

後遺障害の内容

自賠責基準の慰謝料

弁護士基準の慰謝料

1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

1,600万円

2,800万円

2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

1,163万円

2,370万円

3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

829万円

1,990万円

5級2号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

599万円

1,400万円

7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

409万円

1,000万円

9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

245万円

690万円

(出典:自賠責保険ポータルサイト|国土交通省より)


ここで注目して頂きたいのが、慰謝料の種類です。ここでは、「自賠責基準」と「弁護士基準」での相場を記しました。この2つには以下のような違いがあります。


基準の名前

概要

自賠責基準

法令で決められた最低限の補償を行うための基準

弁護士基準

弁護士や裁判所が設定した慰謝料の基準

※実際にはこの2つの間に「任意保険基準」がありますが、保険会社によって異なる基準なためここでは省略しています。


自賠責基準は法令で定められたもので、最低限であるため慰謝料の金額は高くありません。弁護士に依頼して慰謝料を計算すると弁護士基準となるため、自賠責基準の1.5~2倍の慰謝料を受け取れる可能性があります。

 

(※実際には任意保険会社が設けている慰謝料の基準である「任意保険基準」で計算されることが多いですが、こちらと比較しても弁護士基準の方が金額ははるかに高くなります)


高次脳機能障害という深刻な状況において慰謝料を請求することは、事故によって不便を負ってしまった被害者の正当な権利です。ぜひ、適切な処置を行い慰謝料の請求を行うことをおすすめします。

 

3-3 交通事故での高次脳機能障害の認定要件は厳しい

交通事故で高次脳機能障害になってしまった場合では、弁護士などの専門家の助力なく独力で適切な後遺障害認定を受けることはなかなか厳しいのが現状です。その理由と対策について、この章では以下の内容を解説します。

3-3-1 個人で高次脳機能障害の後遺障害等級を適切に申請することは難しい

個人で高次脳機能障害の後遺障害等級を申請するのは難しい理由としては、骨折など目に見える怪我や障害に比べて目に見えづらく、申請しても見過ごされやすく正しく認定されにくいためです。

高次脳機能障害に限らず、後遺障害等級の申請を行う際には医師からの診断書や画像所見等を集める必要があります。高次脳機能障害の認定は簡単ではないため、あらゆる書類や画像を集めて申請し、障害の存在を客観的に明らかにする必要があります。

 

しかし、医学的な専門知識がない個人が十分な書類を集めることは簡単ではないのです。

 

3-3-2 高次脳機能障害での後遺障害等級申請は弁護士への依頼がお勧め

高次脳機能障害での後遺障害等級を申請したいのであれば、弁護士への依頼がおすすめです。後遺障害等級申請に知見のある弁護士であれば、認定に必要な書類や画像を最大限に集めたり、場合によってはより効果的な検査を提案したりすることも可能です。


もちろん、診断書が適切に書かれているかなどのチェックしてもらうことも可能です。


例えば、症状を明らかにするためのレントゲン写真でも、症状が見える部分に付箋を貼るなどして分かりやすくすることで、適切な等級の認定を受けられる可能性は高くなるのです。

 

4 高次脳機能障害での慰謝料請求を弁護士に依頼すべき3つの理由

 

高次脳機能障害で慰謝料請求を行うのであれば、弁護士への依頼が最も確実です。その理由としては、以下が挙げられます。

 

①裁判基準での慰謝料請求が可能

②後遺障害の申請を被害者請求で行える

③示談交渉・裁判手続きもお任せ

 

4-1 適正な慰謝料を請求できる

 

高次脳機能障害での慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、適正な慰謝料を請求できるためおすすめです。

 

3-2.高次脳機能障害での後遺障害等級と慰謝料の相場」でも解説した通り、慰謝料請求を行う際には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つのどれかを基準に計算することとなります。

 

交通事故の慰謝料は基本的に「自賠責基準」または「任意保険基準」で計算されることが多いのが実情です。しかし、これらの基準は基本的には最低限の保障しかカバーされないことが多いのです。

 

いっぽう弁護士に依頼すると、慰謝料は弁護士基準で計算されます。弁護士基準は自賠責基準に比べて1.5~2倍の慰謝料が請求できます。

 

4-2 後遺障害等級認定を被害者請求で行える

 

弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定の手続きに関しても一任できます。

 

後遺障害等級認定の手続きは、様々な書類が必要となり、経験や知識のない個人が十分な資料を集めるのは簡単ではありません。特に、高次脳機能障害の場合は第3章でも解説した通り、画像所見も重要なカギとなります。

 

後遺障害等級認定を行う際には、適切な症状を客観的な事実として証明する必要があります。そのためには診断書や画像など様々な資料が必要ですが、個人がそれらを自分の有利になるように揃えることは困難です。

 

そうした手続き全般も、弁護士に一任できるため依頼をおすすめします。 

 

4-3 示談交渉・裁判も弁護士へお任せ

 

弁護士に依頼すると、示談金交渉をスムーズに行えるという点でも有利です。

 

交通事故で高次脳機能障害になってしまい、後遺障害が残った場合、その慰謝料は加害者側の保険会社と示談交渉をして請求を行います。専門知識のない被害者が有利になるように示談を行うことは簡単ではなく、場合によっては適切な示談金を受け取ることができなくなる可能性があります。

 

また、どちらにどの程度の過失があったのか(過失割合)を決める際にも、専門的な知識がないとスムーズに交渉できなくなる可能性があります。

 

そうしたトラブルを回避して示談交渉をスムーズに行うという意味でも、弁護士への依頼がおすすめです。

 

弁護士特約に加入していれば弁護士費用は無料になる

実は、ご自身が任意加入している保険のオプションで「弁護士特約」が付いている場合、弁護士への相談料や弁護士費用は保険会社が負担してくれます。


まずは、ご自身の保険会社に確認を取ってみましょう。


弁護士特約の存在を知らずに、弁護士への相談を行わず適切な慰謝料ができていないケースは数多くありません。弁護士特約に加入しているのであれば、ぜひ利用し、適切な慰謝料請求を行いましょう。


交通事故の弁護士特約について詳しくは、「交通事故 弁護士特約」で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

5 まとめ

以上この記事では、高次脳機能障害とはどんなものなのか、高次脳機能障害の慰謝料を中心に、以下の内容を詳しく解説してきました。

 

この記事を参考に高次脳機能障害への理解を深めていただければ幸いです。

TEL

監修者

ベストロイヤーズ法律事務所

代表弁護士 大隅愛友

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