相続放棄の6つのデメリット|一度しかできないため安心の弁護士へ依頼

2023年2月23日 10:00

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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この記事でわかること

  • 相続放棄のデメリット、メリット
  • 相続放棄の3つの注意点
  • 相続放棄の具体的な方法
  • 相続放棄を弁護士に依頼することによるデメリットを回避

相続は、必ずしも相続人にとってプラスになるとは限りません。たとえば被相続人が借金を負っていた場合や、価値が低く管理が大変な不動産などを持っていた場合、相続が大きな負担になってしまう可能性があります。

相続を望まない場合、相続放棄の手続きを行えば遺産を相続しなくて済みますが、相続放棄にはいくつかのデメリットがあります。一度相続放棄すると、原則として取消はできませんので、慎重に検討することが大切です。

今回は、相続放棄の主なデメリットと注意点、相続放棄するメリット、相続放棄の方法について解説します。

1 相続放棄のデメリットは6つ

相続放棄することで生じる主なデメリットは大きく分けて6つあります。

1-1 プラスの財産(積極財産)を相続できなくなる

相続放棄は、借金などのマイナスの債務(消極財産)を相続しないで済みますが、反面、預貯金、不動産などプラスの財産(積極財産)も相続できなくなります

マイナスの財産だけを放棄して、プラスの財産だけを相続することは認められていません。

1-2 相続人が変わってしまう

相続人の範囲は民法によって以下のように定められています。[注1]

被相続人との関係

相続順位

配偶者

常に相続人になる

第1順位

直系尊属

第2順位

兄弟姉妹

第3順位

第1順位の子が既に亡くなっていた場合は、その子の子どもや孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。

ただし、代襲相続が適用されるのは、第1順位の子が被相続人より先に死亡していた場合です。

第1順位の子が相続放棄した場合、その子はもともと相続人ではなかったとみなされるため、その子どもや孫への代襲相続は起こりません。この場合、第1順位は該当なしの扱いとなり、遺産は第2順位の人に受け継がれることになります。

プラスの財産が受け継がれるのであれば問題ありませんが、負債がネックで相続放棄した場合、負の遺産は第2順位の人が相続することになってしまいます。

ここでいう直系尊属とは、被相続人の父母や祖父母にあたりますので、想像放棄の結果、自分の祖父母や曾祖父母が借金を背負うことになる可能性があります。

相続放棄によって相続人が変わる場合は、事前に相続権が移る相手に説明しておかないとトラブルの原因になることがあるので要注意です。

[注1]e-Gov法令検索「民法」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

1-3 撤回ができない

相続放棄の手続きが一度受理されると、原則として撤回はできません。取消の申立てを行う事は可能ですが、簡単には認められない手続きですので、基本的に撤回・取消はできないと思っておいた方がよいでしょう。

1-4 相続財産の管理義務の継続

民法第940条では、相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、相続財産の財産の管理を継続しなければならないと定めています。[注1]

たとえば被相続人が借金を負っていた場合、相続放棄をした後も、引き続き債権者への対応を行わなければなりません。相続財産管理人の選任手続きを行えば、家庭裁判所が相続財産管理人を選任してくれるため、財産管理の義務を負わずに済みます。

なお、民法第940条は2023年4月から施行される改正民法により、管理義務の対象者が「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している場合」に限定されることになりました。[注2]

たとえば、被相続人が所有する自宅について、子が被相続人と同居していた場合は相続放棄しても管理義務の対象となりますが、被相続人が一人暮らししていた場合は管理義務の対象外となります。

[注2]法務省「財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)」
https://www.moj.go.jp/content/001321606.pdf

1-5 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない

被相続人に生命保険が掛けられていた場合に給付される死亡保険金や、勤続先から支給される死亡退職金は、相続放棄をしても受け取ることが可能です。死亡保険金および死亡退職金は被相続人が生前所有していた財産ではなく、相続人固有の財産とみなされるためです。

ただ、相続放棄をした場合の死亡保険金および死亡退職金は、税制上「みなし相続財産」とされます。[注3]

みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではないものの、相続税を計算する際は相続財産とみなす財産のことです。相続財産に死亡保険金や死亡退職金が含まれる場合、本来であれば「500万円×法定相続人の数」を差し引くことができますが、みなし財産の場合は適用外になるので要注意です。[注4][注5]

[注3]国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
http:// https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm

[注4]国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htm

[注5]国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
http:// https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm

1-6 家庭裁判所での手続きが必要

相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続の放棄の申述を行わなければなりません。

相続放棄の手続きには、申述書を作成したり、各種添付書類を揃えたりする必要があります。個人ですべての手続きを行おうとするとかなりの手間と時間がかかるため、場合によっては日常生活に支障を来す可能性があります。

2 相続放棄の3つの注意点

相続放棄する際に注意すべき点を3つご紹介します。

2-1 遺産分割協議で相続財産を受け取らないことは相続放棄ではない

遺産分割協議とは、法定相続人同士で相続財産をどう分割するか話し合うことです。協議に参加して相続しないことを意思表示し、他の相続人全員の合意を得られれば、相続分を放棄することができます。

ただし、遺産分割協議で放棄できるのはプラスの資産のみで、借金などの負債はそのまま受け継ぐことになります。負債も含めて相続放棄したい場合は、家庭裁判所にて相続放棄の手続きを行う必要があります。

2-2 単純承認をしてしまうと相続放棄が認められない

単純承認とは、被相続人の財産を無条件ですべて相続することです。単純承認には手続きが不要であるため、相続の開始をしった日から3か月以内に何もしなかった場合、単純承認したとみなされます。

また、相続の前に相続人が被相続人の財産の一部またはすべてを処分した場合も、単純承認を選んだとみなされます。

単純承認をしてしまうと相続放棄が認められなくなりますので、3か月以内に相続放棄の手続きを済ませるのはもちろん、相続前に勝手に財産を処分するのはやめましょう。

2-3 3か月の期間制限

相続の放棄の申述は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内と決められています。[注6]

この期間を過ぎると、前述の通り、単純承認したとみなされてしまうため、相続放棄の手続きを行えなくなります。

3か月の間に財産の調査結果が出なかったなど、特別な理由がある場合は家庭裁判所に申し立てることで期間を延長することが可能です。

[注6]裁判所「相続の放棄の申述」
http:// https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

3 相続放棄のメリット

相続放棄はデメリットだけでなく、以下のようなメリットもあります。

3-1 借金・負債を返済する必要がなくなる

相続放棄すると、プラスの財産だけでなく、負の財産を受け継ぐ権利も放棄できます。故人が抱えていた借金や負債を代わりに返済する義務がなくなるのは大きなメリットです。

また、相続にかかる税金の支払い義務も免除されます。

3-2 親族間のトラブルに巻き込まれなくて済む

相続の際は、法定相続人で集まった遺産分割協議を行う必要がありますが、財産の取り分でもめてしまうケースは少なくありません。相続放棄すれば、遺産を巡るトラブルに巻き込まれずに済みます

4 相続放棄の方法

相続放棄を行う際に知っておきたい必要書類と家庭裁判所への申述について解説します。

4-1 相続放棄に必要な書類

相続放棄を行う際は、相続放棄の申述書のほか、以下のような申立添付書類が必要になります。

被相続人の住民票除票または戸籍附票

申述人の戸籍謄本

上記は最低限必要な書類で、相続の状況や立場によっては、他に被相続人の除籍・快製原戸籍謄本などが必要になることもあります。

4-2 家庭裁判所への申述

必要書類をすべて揃えたら、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出し、申述を行います。

申述期間は相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

5 相続放棄を弁護士へ依頼することでデメリット回避

書類に不備があると申述不可となります。そのため、用意する書類がわからない場合や、申述書の作成の仕方が不明な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

6 まとめ

相続放棄をすると、故人の負債を受け継がなくて良いというメリットがある一方、相続人が変わる、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えないといったさまざまなデメリットがあります。

一度相続放棄してしまうと、原則として撤回することはできませんので、相続放棄を検討する際はメリットとデメリットの両方をよく理解してから慎重に考えることが大切です。

また、相続放棄の手続きでは申述書の作成が必要なほか、各種書類を用意しなければなりません。

書類の不備があると受理されませんので、手続きに不安がある方は弁護士への依頼を検討してみましょう。

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