むちうちで診断書を取得すべき理由とは?取り方や提出先・期限も解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
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交通事故による急性外傷性頚部症候群、通称「むちうち」。
追突事故など外からの衝撃により首や腰がむちのようにしなることで、関節や筋肉、神経など目に見えない部分へ損傷を与えます。
痛みやしびれ、めまい、吐き気などが起こる一方で外傷がないこともあるのが、「むちうち」の症状です。
しかし保険会社からは「もう痛くないですよね」「通院する必要ないですよね」と言われてしまい、必要な慰謝料を支払ってもらえないことがあります。
被害者は診断書を取得しなければ、必要な治療にあてる慰謝料を受け取れなくなる可能性があるため、かならず取得方法と提出期限をあわせて確認してください。
この記事では、診断書の取得方法や提出先、提出期限について、詳しく解説します。
1 むちうちの診断書とは?
「診断書」とは、医師が作成する診断の内容証明書のことです。
自動的に発行されるものではなく、お金を払って依頼をすることで作成されるため、病院を受診する際には受付にて診断書発行の希望を伝える必要があります。
診断書の発行には文書料として3,000〜5,000円ほどの費用がかかりますが、後ほど加害者側の保険会社へ請求できるため、自費で作成した場合はかならず領収書を残しておきましょう。
1-1むちうちの診断書に書かれる内容とは?
むちうちの診断書には基本的に、下記のような内容が記載されます。
・氏名・生年月日
・住所・電話番号
・病院名
・医師名
・事故日時
・事故場所・事故状況
・診断名
・症状
・治療内容
・治療期間
・医師の所見
診断名の部分には「むちうち」ではなく、「外傷性頚部症候群」「頚部打撲」「頚部挫傷」
「頚椎捻挫(頸椎捻挫)」などの表記をされることが多いです。
2 むちうちの診断で重要なポイント2つ
むちうちと診断されるであろう診察時には、下記の点をおさえておくことをおすすめします。
①自覚症状を伝える
②治療終了まで通院する
上記をおさえておくかどうかで、その後に受け取れる慰謝料額等を大きく左右します。
詳しく解説しますね。
2-1 自覚症状を伝える
むちうちは外傷が見られないことや、レントゲンにて異常が見つからないことも多い症状のひとつです。
診察の際にはかならず、自覚症状をしっかりと伝えておくことをおすすめします。
事故の状況や、これから異常を感じうる部分の詳細、少しの違和感や気になる点については細かく伝え、事故との関係性を証言しておくことが今後の自分を守るでしょう。
たとえ医学的な証明が難しくても、自覚症状は重視されます。
2-2 治療終了まで通院する
相手の保険会社との交渉や示談は一般的に、通院が完了してから始めます。
なぜなら、治療にかかった期間や費用をもとに、被害者が受け取る慰謝料や治療費が決まるからです。
損害賠償額は通院期間によっても異なるため、かならず医師による「治療終了」を告げられるまで通院しましょう。
なお、医師による治療終了を受けるタイミングは、おもに2つあります。
・完治した場合
・症状固定と判断された場合
完全に治癒したと判断される場合以外に、「症状固定」と判断される場合があります。
症状固定とは、これ以上の治療を受けても症状改善の見込みがない状況のことです。
「症状固定」とみなされた場合、後遺症に対する賠償金を受け取るためには「後遺障害等級」に該当するかどうかの認定を受けなければいけません。
後遺障害等級の有無やそのランクを証明するためには、医師により「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。
下記で詳しく解説します。
3 むちうちの「診断書」と「後遺障害診断書」の違いとは?
今回ご紹介している「診断書」と似て非なるものとして「後遺障害診断書」が存在します。
「診断書」は、診察をするたびに医師へ作成依頼ができるもので、被害者の症状を診断し書き示すものもです。
「後遺障害診断書」とは、後遺障害申請をするために必要な書類であり、「診断書」とは別物です。
なお、完治しない後遺症つまり「病状固定」と診断されると、保険会社は保険金の支払いを終了し、加害者へ治療費や休業損害、入通院慰謝料の請求もできなくなります。
後遺障害に対する慰謝料は、診断書により受け取れる慰謝料の次のステップであり別物である、と考えてみてください。
3-1 むちうちの「症状固定」はいつから?
むちうちの一般的な治療期間は3ヶ月です。
6ヶ月以上治療を続けても完治しない場合には、「病状固定」と判断される可能性が高まります。
「後遺障害診断書」は後遺障害が残ったときに、後遺障害の内容つまり後遺障害等級の認定基準を証明するために必要となります。
なお、後遺障害診断書料は保険会社に支払いを求めることができるので、領収書を大切に保管してください。
この記事では「診断書」について詳しく解説しています。
4 むちうちの診断書が必要な理由とは?しないとどうなる?
むちうちの症状があるとき、診断書を用意しないと下記のようなデメリットがあります。
①損害賠償額が少なくなる
②治療費の打ち切りをされる
③後遺障害の等級認定が受けられない
それぞれの問題点について、詳しく解説します。
4-1 損害賠償額が少なくなる
事故により怪我人がいないと判断された場合、「人身事故」ではなく「物損事故」扱いになります。
物損事故として処理される場合、加害者へ慰謝料や治療費などを請求できない、あるいは軽微なケガとしてみなされ損害賠償額が少額になることがあります。
むちうちで加害者へ損害賠償を請求する際、参考とされるのが「過失割合」です。
人身事故の場合にだけ作成される「実況見分調査」がない場合、過失割合について加害者と争いになったとき、立場が弱くなってしまう傾向があります。
むちうちであると医師に診断された場合には、かならず診断書作成を依頼し、警察に届け出ることで、人身事故へと切り替えることをおすすめします。
4-2 治療費の打ち切りをされる
診断書がない場合、本来はまだ治療が必要であるにも関わらず、保険会社に治療費の打ち切りをされる可能性があります。
なお、多くの場合に加害者側の保険会社が一括対応の支払いをしてくれるものであり、被害者は自ら医師に診断書の作成を依頼しなくても良い可能性が高いです。
一方で一括対応をしておらず、被害者が治療費の建て替えをする必要がある場合には、被害者が忘れずに診断書の作成をしておくことをおすすめします。
正しく治療費や慰謝料の請求をおこなうためには、事故と怪我の因果関係を証明する必要があるため、診断書作成を依頼しておくべきです。
4-3 後遺障害の等級認定が受けられない
治療を受け続けても完治しない場合、後遺障害の申請をおこなうのが一般的です。
「後遺障害等級認定」を受けることで後遺障害が認められると、保険会社や加害者に後遺障害慰謝料や逸失利益、後遺障害診断書料を請求することができます。
認定される後遺障害等級によって受け取れる金額が数百万円単位で変動するため、医師により適切な認定を受けなければ大きな損失になるでしょう。
・自覚症状
・残存している症状
・改善の見込み
適切な検査を受け、上記のような内容を主治医に記載してもらいます。
物損事故扱いになると軽度のケガであると認識されるため、後遺障害等級の認定が受けにくくなります。
後遺障害の等級認定を正しく受けるためには、診断書を取得し人身事故として診断を受け、後遺症の内容を医者が記載することで作成される「後遺障害診断書」を用意しましょう。
5 むちうちの診断書の提出先・提出期限とは?
むちうちの診断書は、おもに3カ所に向けてそれぞれ提出しなければなりません。
①警察
②保険会社
③勤務先(休業が必要な場合)
提出先それぞれに必要な診断書の内容や、提出期限について、詳しく解説します。
5-1 警察
物損事故を人身事故に切り替えるため、むちうちの診断を警察に提出する必要があります。
診断書は、病状を証明するため病院所定の書式にて、医師により作成されたものを用意します。
むちうちの診断書の提出期限については、法律上では定められていません。
しかし、時間があきすぎることでケガと事故の関係性を疑われる可能性があるほか、人身事故としての切り替えが遅くなるにあたり、デメリットが大きくなります。
目安としては、事故発生から2〜3日以内、遅くても10日以内には提出しましょう。
5-2 保険会社
交通事故が起きると、被害者は加害者の保険会社から賠償金を受け取るため、診断書を提出する必要があります。
なおこの診断書は、保険会社所定の書式にて用意しなければなりません。
提出期限は、人身事故の損害賠償請求の時効である5年、または物損事故の時効である3年以内です。
とはいえ、遅くなるほど事故と怪我の関係性を証明しにくく、賠償金を受け取りづらくなるため、可能な限りはやく動き始めることをおすすめします。
5-3 勤務先(休業が必要な場合)
交通事故によりむちうちの症状がみられ、仕事を休まなければならないときには原則、勤務先へ診断書を提出します。
仕事を休むことで減った収入分については、加害者側へ「休業損害」として請求することが可能です。
むちうちで就労不可であるむねを証明するためには、医師に診断書を作成してもらい、症状を明らかにする必要があります。
なお、症状が完治しない「症状固定」と判断された場合には、診断書に加えて「後遺障害診断書」の作成も依頼してくださいね。
6 【まとめ】むちうちの診断書は絶対に取得しましょう
むちうちは見た目こそ痛々しくないことも多いですが、神経や筋肉など重要で見えない部分に損傷を負っている可能性があります。
ほうっておくと後々大きな後遺症を抱えるリスクにつながるため、必要な治療は早期にしっかりと受けておくべきでしょう。
むちうちになった場合には外傷がないからと弱気になる必要はなく、自覚している症状や違和感を医師にしっかり伝え、診断書に記載してもらうことを強くおすすめします。
事故でむちうちの可能性を感じる場合は、かならず医師に相談し、症状を確認してもらってくださいね。
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
全国からご相談を頂いております。ご希望の方はお電話またはwebでの無料相談をお気軽にご利用ください。