交通事故の裁判でかかる費用と費用倒れにならないための判断方法

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交通事故の示談交渉において,保険会社からの示談金の提示額が思ったよりも少なかったり,過失割合に争いがあるなど,保険会社との話し合いがうまくいっていない場合,裁判を起こすことを検討される方もいらっしゃるかと思います。

でも,裁判なんてしたことないし,実際費用はどれくらいかかるの?裁判を起こして,費用でかえってマイナスになってしまうかも,と不安になりますよね。裁判で費用倒れにならないためには、実際に裁判にかかる費用と、裁判によって増加できる費用を知ることが重要です。

1000件以上の交通事故のご相談実績を有する大隅愛友弁護士が,交通事故の裁判でかかる費用と費用倒れにならない方法を徹底解説します。

ここでは,具体的に実際に裁判にかかる費用や裁判によって増える金額をわかりやすくご紹介させていただきます。この記事を読んでいただければ、自分のケースでは裁判を起こすべきかどうか、弁護士に相談すべきかどうかの判断の一助としていただければ幸いです。

1.交通事故の裁判にかかる費用

交通事故の裁判は損害賠償請求訴訟といいます。この裁判にかかる費用は「裁判費用」と「弁護士費用」、「その他かかる可能性のある費用」の3つが考えられます。

 

裁判費用

裁判費用には申立手数料と郵便代があります。

損害賠償を請求する際に、請求金額によって裁判所に納める申立手数料が変わってきます。請求額が高額になると,それに比例して申立手数料も上がっていきます。申立手数料は収入印紙を購入し,訴状に添付することによって納付します。

印紙代が請求額に比例して変わるのに対し,切手代は6000円と定額です(ただし,当事者が増えるごとに2000円追加されます)。

弁護士費用

裁判をする際に弁護士に代理人として依頼する場合は弁護士費用がかかります。

弁護士への報酬には着手金と成功報酬があります。そのほかに弁護士が裁判出廷する際の交通費や,弁護士の拘束時間が長い場合は日当が発生する場合もあります。

・着手金
通常,弁護士に依頼した時点で支払う報酬です。裁判に勝っても負けても支払わなければならないものなので,裁判に負けても返還請求はできません。金額は弁護士によって違いますが,10万円~30万円くらいが相場と思われます。着手金無料の弁護士事務所もあります。

・成功報酬
裁判の結果,依頼者が獲得できた金額に応じで支払う報酬です。「獲得できた金額の〇%」という契約で支払うものとなります。これも弁護士によって違いますが,10%~30%が相場です。

・日当
弁護士が実際に裁判所へ出廷する際は,移動の交通費や,拘束時間が長い場合は日当が発生する場合があります。日当も弁護士によって異なりますが「拘束時間が半日の場合は3万円,一日の場合は5万円」などと契約書に記載されています。

依頼した弁護士の事務所と訴訟を起こす裁判所が遠いと,交通費もかさみますし,日当も発生する可能性が高くなります。弁護士の選定の際は,訴訟を提起する裁判所が遠方でないかどうかも選定する際の参考にするとよいでしょう。

ちなみに交通事故の裁判を提起する裁判所は①加害者の住所地を管轄する裁判所 ②被害者の住所地を管轄する裁判所 ③交通事故の住所地を管轄する裁判所 の3つから選択することができます。

(例)東京都世田谷区在住の人と愛知県名古屋市在住の人が,北海道札幌市で交通事故を起こした場合
訴訟を提起する裁判所:①東京地方裁判所,②名古屋地方裁判所,③札幌地方裁判所の3つの裁判所から選ぶことができます。

その他かかる可能性のある費用

訴訟費用と弁護士費用の他に係る可能性がある費用として以下のものが考えられます。

・控訴・上告した場合の申立手数料
裁判は三審制なので,1回目の裁判が不服の場合,控訴することができます。また,控訴の結果が不服であれば上告することができます。その際に支払う申立手数料は控訴の場合で訴訟の1.5倍,上告の場合は訴訟の2倍となります。

・裁判記録の謄写費用
裁判が進む中で,証人尋問や当事者尋問が行われた場合,裁判所で尋問調書が作成されます。その内容を確認するためには,尋問調書の写しを取得することが出来ますが,調書の枚数によって1枚につき20円~50円かかります。5000円前後かかります。

・証人への日当・交通費
証人尋問に証人を呼ぶと日当や交通費が発生します。日当は1日1万円前後かかります。

2 裁判を起こすことによって獲得(増額)できる可能性のあるお金

裁判を起こすにあたって,交通事故の裁判によって増える可能性のあるものは,大きいところで入通院慰謝料や後遺障害慰謝料や治療費が考えられます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、交通事故に遭った被害者がみな受け取れる慰謝料で,治療期間とけがの程度によって額が決まります。

また,慰謝料の計算方法については、「自賠責保険基準」と「任意保険基準」と「裁判基準」の3つがあります。治療期間によって多少変わりますが「自賠責保険基準」が一番安く、「裁判基準」が一番高い計算方法です。通常保険会社は自賠責基準か任意保険基準に基づいて提示ことが多く、保険会社の入通院慰謝料の提示額が自賠責保険基準や任意保険基準に基づくものであれば、裁判をした際には裁判基準に基づき計算されるので増額されます。

①自賠責保険基準
入通院慰謝料は日額4300円です。それに,通院期間または通院日数×2のどちらか少ないほうをかけた金額が入通院慰謝料になります。また,自賠責保険には上限があり,治療費や交通費等すべて含めて120万円が上限となります。

②任意保険基準
かつて,全損害保険会社共通の相場表があり、「任意保険基準」と呼ばれています。現在では、この基準を参考に保険会社ごとに独自の基準を設定されている会社もありますが,公開されていません。

③裁判基準
むち打ちなど軽症の場合と,入院や骨折など重症の場合で,基準が設定されています。裁判の場合は裁判基準で計算されます。

 

       

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、治療をしたが完治せず後遺症が残ってしまった場合に、後遺障害の等級認定を受けることで,入通院慰謝料とは別に受け取ることができる慰謝料です。「自賠責保険基準」と「裁判基準」の2つがあり、認定された等級によって額が決まります。任意保険会社では独自の基準を設けている会社もありますが,自賠責保険基準で提示することも多いです。

通常むちうちの後遺症の場合は後遺症の14級~12級と認定されます。

3 交通事故の裁判で費用だおれにならないよう判断する方法

交通事故の裁判を起こして,示談金の額は増額できたが,裁判にかかる費用がかかってしまい、費用だおれにならないかを検討をする必要があります。事案によって自身で判断できるかどうかが変わるので、ここでは2つのケースを紹介します。

治療期間や過失割合に争いがない場合

慰謝料の金額のみに争いがある場合は,増額できる具体的金額が計算しやすく,裁判を起こすかどうかの判断がしやすいです。

(治療期間6か月,むちうち,後遺障害14級のケースの例)
裁判によって獲得できる額⇒ 入通院慰謝料89万円+後遺障害慰謝料110万円=199万円
裁判にかかる額⇒ 訴訟費用 印紙代1万5000円+郵券代6000円=2万1000円
弁護士費用 着手金10万円+成功報酬19万9000円=29万9000円

〇任意保険会社の示談金の提示額が低い場合(自賠責基準・旧任意保険基準の提示)
提示額 入通院慰謝料64万3000円+後遺障害慰謝料32万円=96万3000円
         ↓
裁判を起こすことによって102万3000円アップ
         ↓
裁判にかかる費用(32万円)を引いても70万3000円プラス

〇任意保険会社の示談金の提示額が高い場合(裁判基準の90%の提示)
提示額 入通院慰謝料80万1000円+後遺障害慰謝料99万円=179万1000円
         ↓
裁判を起こすことによって19万9000円アップ
         ↓
裁判にかかる費用(32万円)を引くと12万1000円マイナス

治療期間や過失割合に争いがある場合

納得のいく判決が出るとは限りません。場合によっては当初の示談金の提示より不利な判決が出る可能性もあります。この場合は,弁護士に相談するなどすれば,自分のケースでは裁判で勝てる可能性があるかどうかをある程度検討することができるかもしれません。弁護士の相談は無料でやっている事務所も多数あります。

4 交通事故の裁判にかかる費用を少なくする方法

訴訟費用については法律で定められた金額なので,少なくすることは出来ませんが,弁護士費用については工夫することで費用を抑えることが出来る可能性があります。

弁護士特約を使う

弁護士特約とは、自動車保険や火災保険などにオプションとして付けられる付加契約のことです。保険会社との契約内容によって異なりますが、自身の加入している任意保険会社に弁護士特約が付いている場合,弁護士費用を保険会社が全額(または一部)負担してくれます。自動車の損害保険に限らず,自宅などの損害保険に弁護士特約が付いている場合もあり,それを使える場合もあります。保険会社や契約内容によって違いがあるので,一度ご自身の保険会社へお問合せをして確認しましょう。

法テラスの民事法律扶助制度を使う

「法テラス」とは,国が設立した機関で,法律問題の相談や,支援を受けることができます。法テラスで弁護士費用を立て替えてくれる制度がありますが、収入や資産が一定基準以下の方のみが対象で、弁護士も自由に選ぶことはできません。法テラスの制度を検討してみたいという場合は、直接法テラスへお問合せしてみて、自分が制度を利用できるかどうか確認してみましょう。 法テラスのホームページ

4.3 少額訴訟を利用する

少額訴訟は請求額が60万円以下の場合に提起することができる訴訟です。通常の訴訟に比べて手続きが簡単なので,弁護士に依頼せず本人が手続きする場合も多く,費用も1万円程度です。 少額訴訟とは

弁護士に依頼せず本人が行う

交通事故の裁判の手続等は難しく,法律の知識も必要ですが,自分で訴訟を起こすこともできます。ただし、裁判や法律に関する知識がないと、損害額を最大に請求できていなかったり、経験豊富な相手方の弁護士によって相手方に有利に裁判を進められ、結果として自分に不利な判決が出る可能性があります。

まとめ

裁判にかかる費用や獲得できる金額など、細かくご説明させていただきましが、ご自身のケースでは、裁判を起こしたほうがいいか,また、弁護士に相談してみたほうがいいか、ご判断いただけたでしょうか。納得のいく結果になるようシュミレーションして,検討してみてください。

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