遺留分の時効とは?遺留分侵害額請求の時効はいつ?請求方法まで解説

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弁護士 大隅愛友

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遺留分の時効とは?遺留分侵害額請求の時効はいつ?請求方法まで解説

相続が発生したとき、条件に当てはまる親族は「遺留分(いりゅうぶん)」と呼ばれる、特定の相続を受けることができます。

そこで、遺留分にあたる相続の侵害があった場合には、「遺留分侵害額請求」をおこなうことで、遺留分を請求しなくてはいけません。

しかし、遺留分侵害請求ができる期間は決まっており、過ぎてしまうと時効になるため、遺留分の相続が受けられなくなります。

遺留分侵害請求の事項と定められている期限は主に3パターン用意されており、いずれかの期間に当てはまると時効となります。

消滅時効に該当すると遺留分を請求できなくなってしまうため注意が必要です。

この記事では、遺留分とは何なのかから、遺留分侵害額請求の時効についてまで、詳しく解説します。

1 遺留分とは?

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相続が起きたとき、両親や子、亡くなった人の配偶者は、相続人として最低限の財産を受け取ることができることが、法律で定められています。

【関連記事】遺留分は兄弟にはない|その理由と遺留分なしでも財産を相続する方法

最低限受け取ることができる相続財産が「遺留分」です。

遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合、遺留分権利者は相続を受け取った人に対して、不足分を請求することができます。

たとえば被相続人(亡くなった方)が1人の相続人だけに相続を独り占めさせる、との遺言書を残していた場合、「遺留分」があることの主張が可能です。

【関連記事】遺言書の全財産が無効になるケースとは?1人に相続させることは可能?

1-1 遺留分侵害額請求権とは?

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遺留分を主張するためには、「遺留分侵害額請求権」を行使しなくてはいけません。

※なお、今までは「遺留分減殺請求権」と呼ばれていましたが、2018年の法改正により「遺留分侵害額請求権」に変更となりました。

「遺留分侵害額請求権」を行使することで相続を受け取った人に、遺留分の不足している部分の支払い請求をすることが可能です。

2 遺留分侵害額請求権の消滅時効とは?3つのパターンを解説

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遺留分侵害額請求権には、時効除斥期間(期間の経過のみで権利が消滅すること)となるパターンが3つ用意されています。

遺留分の請求ができなくなる時効のタイミングは下記の通りです。

①相続開始と遺留分侵害を知ってから1年:遺留分侵害額請求権の時効
②遺留分侵害額請求の意思表示をしてから5年:金銭支払い請求権の時効
③相続開始から10年:遺留分侵害額請求権の除斥期間

つまり、相続開始や遺留分侵害を知っていれば1年、知らなくても相続が発生してから10年が経過していれば、遺留分の侵害額請求権を行使することはできなくなります。

3つのパターンについて、詳しく解説していきます。

2-1 遺留分侵害額請求権の時効:相続開始と遺留分侵害を知ってから1年

遺留分を侵害されている法定相続人(遺留分侵害額請求者)は、下記の2点両方を知ってから1年以内に「遺留分侵害額請求」をしなくては時効となります。

・相続が開始していること
・自分の遺留分が侵害されていること

たとえば、相続が開始していることを知っていても、遺留分が侵害されていることを知らなかった場合には、時効期間のカウントはスタートしません。

2-2 金銭支払い請求権の時効:遺留分侵害額請求の意思表示をしてから5年

遺留分侵害請求権を行使すると、「金銭支払い請求権」が発生します。

金銭支払い請求権は原則、5年で時効となると決められています。

つまり、遺留分侵害請求権を行使しただけで何もしなかった場合には、金銭支払い請求権が5年で時効となり、結果的に遺留分の請求はできません。

時効による請求権の消滅を食い止めるためには、裁判上で5年以内に動く必要があります。

自分1人でなんとかするのは現実的ではないので、すぐに弁護士へ相談するのがおすすめです。

※法改正により、遺留分侵害請求権を2020年3月31日以前に行使していれば10年、2020年4月1日以降に施行していれば5年が時効期間となるので注意。

2-3 遺留分侵害額請求権の除斥期間:相続開始から10年

遺留分侵害額請求権は、相続開始から10年で除斥期間となります。

10年という期間は相続が開始してからカウントされ、たとえ遺留分権利者が相続の存在や遺留分の侵害について知らなかった場合にも適用されます。

この10年に例外はありません。権利の上に眠る者(自ら積極的に権利を行使しない者)は保護しないという法律・裁判の考え方の現れとされます。

3 【遺言書が無効の場合】遺留分の時効はどうなる?

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遺言書が無効である場合、遺留分侵害額請求権の行使期間についても無効になるのでしょうか?

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結論、遺言書の無効は遺留分侵害額請求権の時効とは関係なく、原則としては「遺留分侵害額請求権の時効が進行するもの」としています。

なお裁判所は今まで、「相続と遺留分侵害があるとわかっているのだから、遺留分侵害額請求権は期限内に行使するよう動くべきである。遺言書の無効が原因で何もしなかったことを証明できて、遺留分侵害額請求権を行使しないことに正当な事情があると認められる場合でなければ、遺留分侵害額請求権の時効は進行する」とした判例を出しています。

つまり、相続が発生し遺留分の侵害があるとわかった時点で、すぐに遺留分侵害額請求権を行使すべきであるということです。

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4 遺留分侵害額請求の方法

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遺留分侵害額請求の方法は、主に下記の流れで進めます。

①遺留分侵害額請求の通知書を作成する
②作成した通知書を配達証明付内容証明郵便で郵送する
③「遺留分侵害額請求の支払いに関する合意書」を取り交わす

まずは、遺留分侵害額請求の通知書を作成し送付することで、遺留分侵害額請求権の時効を止める必要があります

具体的には「配達証明付内容証明郵便」を使い、下記の項目を記載した通知書を相手方に送ります。

・請求日時
・請求者本人の氏名
・請求先の相手氏名
・請求対象の遺言・遺贈・贈与の内容
・遺留分侵害額にあたる金銭の支払請求をする旨

下記に、記載例をご紹介します。

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上記のように執筆した書類を、「配達証明付内容証明郵便」で送付します。

4-1 「配達証明付内容証明郵便」で書面を送る必要性とは?

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用意した書面は、どのような形で郵送しても問題はありません。

しかし、「配達証明付内容証明郵便」での送付を強くおすすめする理由は、「送られてきていない」「届いたときには期限が過ぎていた」と言い逃れされるのを防ぐためです。

配達証明付内容証明郵便は、郵便局の窓口で手続きすることができます。

ただし、すべての郵便局で対応しているわけではないので、事前に確認をしておきましょう。

あるいは、「e内容証明」で作成し送付することもできます。

郵便局で差出しをするよりも安く、引受結果の表示などもオンラインで確認できるため便利です。

4-2 相手と「遺留分侵害額請求の支払いに関する合意書」を取り交わす

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遺留分侵害額請求権の時効を止めるためには、相続を多く受け取った相手に遺留分請求の意思を表示しなくてはいけません。

遺留分侵害額請求の通知書を受け取った相手がそのまま応じてくれるのであれば、「遺留分侵害額請求の支払いに関する合意書」の取り交わしをします。

遺留分侵害額請求の支払いに関する合意書は、公証役場にて公正証書で作成することを強くおすすめします。

なぜなら、万が一その後に遺留分の支払いがなされない場合、差し押さえをすることができるからです。

5 相続人どうしの話し合いが進まない場合は?調停・訴訟が必要

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遺留分侵害額請求は難航することがありますが、相手が取り合ってくれない場合などには裁判上の請求を求めなくてはいけません。

相続人どうしの話し合いが進まないのであれば、家庭裁判所で「遺留分侵害額の請求調停」の申立てをしましょう。

【関連記事】遺留分侵害額請求の調停とは?手続きの流れやポイントについて弁護士が解説

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また、調停でも話し合いが進まない場合には、「遺留分侵害額請求訴訟」を地方裁判所にて起こす必要が出てきます。

・簡易裁判所:遺留分侵害請求額が140万円以下の場合
・遺留分侵害請求額が140万円超えの場合

この場合、ほとんどのケースでお互いに弁護士に依頼をされています。

5-1  【注意】請求後は「金銭支払い請求権」の時効5年以内に交渉

「遺留分侵害額請求」をしたからといって、安心するのはまだ早いです。

遺留分侵害額請求をすると、「金銭支払い請求権」の時効期間のカウントがスタートします。

時効である5年を超えてしまうと、その後は金銭の支払いを請求する権利を失い、遺留分の取得ができなくなります。

「相手からの返事が遅いから話し合いが進まない」というケースも言い訳にはならないため、辛抱強く話し合いを進め、5年以内に決着をつける必要があります。

6 【まとめ】遺留分の請求には時効がある!すぐに動くのが◎

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遺留分の権利を持つ人は、侵害されても最低限の相続財産を受け取ることができます。

しかし、遺留分侵害額請求権には時効があるため、いつでも請求できると思っているのは危険です。

法律で定められている権利や時効をくつがえすことはできないので、正式に時効となれば弁護士の力でもお手伝いできないことがあります。

「相続が発生した」あるいは「遺留分があるとわかった」ときには後回しにせず、すぐに動くことで、ご自身の権利をしっかりと主張できるでしょう。

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