遺言書が偽造されたらどうすればいい?疑った際の法的手続きから防止策まで弁護士が解説

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遺言書が偽造されたらどうすればいい?疑った際の法的手続きから防止策まで弁護士が解説

遺言書とは、生前に残した財産の分配や、自分が亡くなった後の事務手続きに関する最後の意志を明示する重要な文書です。

しかし、この遺言書が偽造されると、本人の意志が反映されず、相続人間でのトラブルや法的な問題が発生する可能性が高まります。

そこで本記事では、遺言書の偽造について、どのようなものなのか、どのような法的手続きが必要なのか、対処法や防ぐ方法も踏まえて、弁護士の視点から詳しく解説します。

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1 遺言書の偽造とは?

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1-1 偽造とは

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遺言書の「偽造」は、一般的には被相続人(故人)以外の者が、その名前を騙って遺言書を作成したり、既存の遺言書の内容を本質的に改ざんしたりする行為を指しています。

このような偽造行為は、相続人が自分に有利な形で遺言書を作成する場合に見られることがあります。

遺言書の偽造問題は、単に筆跡鑑定して解決できるような単純なものではなく、故人が本当にその遺言書を書いたのかどうかが大きな焦点となります。

そのため、筆跡鑑定だけでなく、その他の状況証拠も考慮に入れて判断されることになります。

遺言書の偽造は、法的にも道義的にも重大な犯罪行為であり、その証明や立証は非常に難しいものがあります。

したがって、遺言書の偽造が疑われた場合や、自分が被害者である可能性がある場合は、早急に専門の法的アドバイスを求めることが重要です。

1-2 偽造と破棄、変造の違い

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遺言書に関する不正行為は「偽造」のほか、「破棄」「変造」といったものも見受けられますが、それぞれ異なる性質と影響を持っています。

これらの違いを理解することは、遺言書に関するトラブルに遭遇した際の対処法を考える上で非常に重要です。

「破棄」は遺言書そのものの有効性を損なうような行為を指します。

具体的には、遺言書を焼却したり、捨てたり、あるいは隠蔽するなどが該当し、法的に果たすべき役割を無効にしてしまう行為となります。

次に、「変造」は、既に完成している信頼性のある遺言書に何らかの手を加え、その内容や価値を変えてしまう行為を意味します。

例えば、相続人が故人の残した遺言書の一部を書き換えるケースがこれに当たります。

1-3 偽造を立証するには

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遺言書の偽造を立証するためには、多角的な観点からの証拠集めが必要です。

遺言書が本当に遺言者によって書かれたものかを確認する基本的な方法の一つが『筆跡鑑定』です。

筆跡には個々の特徴が現れるため、専門の鑑定人によって分析されることになります。過去には、筆跡鑑定によって遺言書の偽造が明らかにされた裁判例も存在します。

また、筆跡鑑定だけではなく、遺言書の各ページで用紙が異なる場合や、文字の色や濃度が途中から異なっているような場合にも、偽造の疑いを強める要素となります。

遺言者の認知能力が低下していたにもかかわらず、複雑で詳細な内容の遺言書であることや、遺言者と疎遠だった親族に多額の遺産が遺贈されている場合にも、真正性に疑念が生じる可能性があります。

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以上のような多角的な状況証拠を組み合わせることで、遺言書の偽造を立証する可能性が高まります。

ただし、これらのプロセスは専門的な知識と経験が求められるため、疑念が生じた場合は速やかに法的な専門家の協力を得ることが重要です。

2 偽造されやすい遺言書の特徴

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2-1 遺言の種類

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遺言書は、その作成形式によって大きく3つの種類に分けられます。それぞれの種類には、独自の作成手続きと特性があります。

①自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自らの手で文書を作成するものです。特に専門的な知識や第三者の介入が不要なため、手軽に作成できる一方で、偽造や改ざんのリスクが高いとも言われています。

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②公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が立会いのもとで作成されます。そのため、法的な形式が厳格に守られ、偽造のリスクは極めて低いと考えられます。

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③秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が自筆で書いた遺言書を封印し、信頼できる第三者に託す方法です。この形式も一定の法的手続きが必要であり、偽造のリスクは比較的低いとされています。

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以上のように、遺言の種類によっては偽造されやすい特性があります。そのため、どの形式の遺言書を選ぶかは、そのリスクを総合的に考慮する必要があります。

2-2 自筆証書遺言のリスク

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遺言書の形式にはそれぞれ特有のリスクがありますが、特に自筆証書遺言にはいくつかの懸念点が存在します。

①公証人の不介入

自筆証書遺言は、公証人が関与しない唯一の遺言形式です。このため、遺言者自身以外の人物が遺言書を作成し、それを遺言者のものであるかのように偽装する可能性があります。

②容易な内容の改ざん

自筆証書遺言は、公正証書遺言や秘密証書遺言と比べて、内容の改変が比較的簡単に行えるという特性があります。遺言者の意思が正確に反映されないリスクを高める要因となります。

③特定の相続人への不利益

偽造や改ざんが行われた場合、遺言者の意志に反して特定の相続人が不利益を被る可能性が高まります。これは、遺言者が望んでいた相続の平等性や公平性を損なう結果を招くことがあります。

3 遺言書を偽造した場合

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3-1 有印私文書偽造罪

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遺言書を偽造する行為は、刑法において「有印私文書偽造罪(同法159条1項)」が成立する可能性があります。

この罪には、3ヶ月から最高で5年までの懲役刑が科されることが規定されています。

同条2項には、遺言書を単に偽造した場合だけでなく、既存の遺言書に手を加えて変造した場合の刑罰についても規定されています。

3-2 相続人の欠格事由に該当する

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遺言書の偽造行為は、相続においても深刻な影響を及ぼします。民法において相続から除外される「欠格事由」に該当する可能性があります。

民法の規定(民法891条5号)によれば、遺言書を偽造した者は、相続権を失う「相続欠格者」とされます。

この状態になると、その人は相続から一切除外され、相続財産を受け取る権利を失います。

【関連記事】相続欠格となる5つの事由~その効果や手続き、相続廃除との違い

ただし、この相続欠格者に子どもがいる場合、その子どもは「代襲相続」によって相続権を有することができます。

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3-3 損害賠償請求

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民法においては、他人に損害を与えた場合、その行為が不法行為とされる場合があります(民法第709条)。

遺言書の偽造も、この不法行為に該当する可能性が高く、その結果として損害を受けた相続人や受遺者は、偽造者に対して損害賠償を請求することができます。

4 偽造を証明・疑われた場合の対処法

偽造を証明・疑われた場合の対応方法

4-1 家庭裁判所の検認

自筆証書遺言においては、遺言者が亡くなった後、遺言書の保管者は速やかに家庭裁判所に検認を申し立てる義務があります(民法第1004条第1項)。

この検認手続きを経ないと、遺言書は法的に有効とは認められません。

検認では、遺言書の現状を確認し、その内容を相続人に通知します。

ただし、検認では遺言の有効性については判断されません。有効性については、調停や訴訟で争う必要があります。

遺言書を家庭裁判所に提出せず、勝手に開封する行為は法律で禁じられています。このような行為をした場合、5万円以下の過料が科される可能性があります(民法第1005条)。

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4-2 遺言無効の調停・訴訟

遺言の有効性について疑念がある場合、家庭裁判所へ遺言無効の調停を申し立てることになります。

調停は、関係者が話し合いによって問題を解決する非訟手続きです。この段階で合意に至れば、訴訟を避けることができます。

調停が不調に終わった場合、次の手続きとして遺言無効確認訴訟があります。この訴訟を通じて、遺言書の有効性が裁判所で判断されます。

もし遺言が無効と判定された場合、その部分に関する遺産の分割は再度行わなければなりません。つまり、無効とされた遺言に基づいて行われた遺産分割は、その部分に限り無効となるわけです。

5 遺言書の偽造を防ぐ方法

遺言書の偽造を防ぐ方法

5-1 公正証書遺言の活用

遺言の内容を確実に実現したいと考える場合、公正証書遺言が最も信頼性の高い方法と言えます。

この方法は費用がかかる上、公証役場に足を運ぶ必要がありますが、その手間と費用を考慮しても、多くのメリットがあります。

公正証書遺言では、公証人が遺言者の意志を確認しながら遺言書を作成します。このプロセスによって、遺言書が無効になるリスクは大幅に低減されます。

ただし、公正証書遺言であれば、すべての問題を解決するわけではありません。

例えば、遺言者が認知症などで意思能力が低下している場合、その遺言は無効とされる可能性があるからです。実際に、遺言者が認知症であったとして遺言が無効とされた判例も存在します。

それでも、公正証書遺言は自筆証書遺言よりも安全性が高いと言えます。公証人が遺言者の意志を直接確認するため、後で内容が争われる可能性が低く、遺言の実現確率が高まります。

5-2 自筆証書遺言書保管制度の活用

自筆証書遺言書の安全な保管方法として、法務局が提供する「自筆証書遺言書保管制度」があります。

この制度を利用する場合、遺言者自身が法務局で手続きを行う必要があります。その際、本人確認もしっかりと行われるため、遺言書の信頼性が高まります。

法務局で遺言書の原本が保管されるため、家族や相続人が遺言書を勝手に変更するリスクがかなり低くなります。

自宅などで保管する場合に比べて、大きな安心感をもたらします。

6 まとめ|遺言偽造は弁護士へ相談

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本記事では、遺言書の偽造に着目し、詳しく解説しました。

遺言書の偽造は、相続人が大きな損害を受ける可能性があります。

そのため、遺言書を作成する際、または遺言書に関わる際は、偽造の可能性を常に考慮し、適切な対策を講じる必要があります。

そのため、遺言書が偽造されているかもしれないと、疑っているような場合には、相続問題に強い弁護士に相談してみてください。

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