人身事故入手不能理由書とは?記載内容や注意点を弁護士が徹底解説!

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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人身事故入手不能理由書とは?記載内容や注意点を弁護士が徹底解説!

交通事故に遭ったとき、基本的には警察へ「人身事故の届出」を出しますが、さまざまな理由により届出を出さない人もいるのではないでしょうか?

ただし、人身事故の届出がない状態で「自賠責保険」を請求するためには、「人身事故入手不能理由書」が必要になります。

今回は、人身事故入手不能理由書について、記載内容や注意点を詳しくご紹介します。

  • 「人身事故の届出を出さないリスクを知りたい」
  • 「人身事故入手不能理由書について知りたい」
  • 「後になって怪我がひどくなり自賠責保険に請求したい」
  • 「人身事故入手不能理由書の作成を求められた」

上記のような方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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1 人身事故入手不能理由書とは?いつ必要になる?

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1-1 人身事故入手不能理由書とは

人身事故証明書入手不能理由書とは、交通事故の証明書類のうち、何らかの理由で人身事故の証明書が取得できない場合に作成することのある書類をいいます。その名前のとおり、人身事故の届出をしなかった理由を記載する書類です。

1-2 人身事故入手不能理由書が必要となる理由

人身事故入手不能理由書が必要な理由について説明していきます。

まず、交通事故は大きく分けて、車やバイクなど物が壊れた場合の『物件事故』と、人が怪我をした場合の『人身事故』の2種類に分かれます。

物件事故も人身事故も、交通事故に遭った後に警察へ連絡して『交通事故証明書』を作成してもらうまでは同じです。

2種類の違いは、被害者から病院の診断書が提出されると『人身事故』という扱いになり、診断書を提出しない場合は『物件事故』として扱われることです。

このまま何もなければ問題はありませんが、仮に後から怪我の賠償をおこなう『自賠責保険』を請求したいとなった場合に問題が発生します。というのも、自賠責保険は物件事故のままでは受け付けてもらえないのです。

そこで必要となるのが、『人身事故入手不能理由書』になります。

人身事故入手不能理由書が必要となるタイミングは以下の2つです。

  • 被害者が自ら『自賠責保険』へ請求するとき
  • 任意保険会社が『自賠責保険』へ請求するとき

2 人身事故入手不能理由書の記載内容とは?

人身事故入手不能理由書の記載例.gif

(出典:ソニー損保)

人身事故入手不能理由書に記載すべき事項は以下のとおりです。

 ①人身事故扱いの交通事故証明書が入手できなかった理由について

・受傷が軽微で、検査通院のみ(予定を含む)であったため

・受傷が軽微で、短期間で治療を終了した(もしくは終了予定の)ため

・公道以外の場所(駐車場・私有地など)で発生した事故のため(※)

・事故当事者の事情

 ②事故の届出をおこなった警察署・担当官・届出年月日(届出を行っている場合)

 ③関係者の記名と押印

 ④交通事故の概要について

※警察へ人身事故の届出をおこなっていても、事故が起きた場所によっては『交通事故証明書』が発行されないケースもあります。

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3 人身事故入手不能理由書に関する注意点  

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3-1 保険会社からの治療費の早期打切りのリスク

保険会社からの治療費の早期打ち切り.jpg

人身事故入手不能理由書では入手理由を書かなくてはなりません。その理由は、「怪我が軽微(だと思った)」と書くことが多いのですが、その場合には、怪我の程度が重くないとして、保険会社からの治療費の支払いが早期に打ち切られるリスクがあります。

交通事故に多いむち打ちなどの神経症状は、事故直後は軽傷だと思っていても、後から状態が悪くなったり、治るまでに時間がかかったりすることも少なくありません。

しかし、保険会社からすると、最初に軽微であると言っている以上、そこまで治療は長引かないと思われてもおかしくないのです。そうなった場合は、まだ治療が必要であるもかかわらず、治療費は出してもらえず、治療費を一旦立て替える必要があるという不都合な事態となる可能性があります。

3-2 後遺障害等級の認定が難しい可能性もある  

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後遺障害等級とは、交通事故による後遺障害の度合いに応じて認定される等級のことです。

認定された場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

しかし、人身事故入手不能理由書で「怪我が軽微だった」と言ってしまっている以上、後遺障害等級の認定を受けるのは難しくなるでしょう。また、むち打ちなど神経症状で後遺障害の申請をおこなう場合、画像などで異常所見を確認するのは難しい場合もあります。

本人の自覚症状や通院回数や頻度などに基づいて判断されるため、そもそも簡単に認定を受けるのは難しいのです。そこに、「当初は怪我が軽いと思った」という理由が加われば、当然ながら、後遺障害等級の認定には不利になると考えられます。

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3-3 過失割合の交渉をしていく時の証拠が不十分になる

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交通事故で受傷が生じた場合、人身事故の届出を出すことで、警察の捜査の一環として「実況見分調書」という書類が作成されます。

この実況見分調書は、過失割合について揉めた場合に重視される資料です。

しかし、人身事故の届出を出さなかった場合は、実況見分はおこなわれないため、当然書類も作成されません。つまり、過失割合で争いとなった場合、重要証拠となる実況見分調書がない状態で交渉を余儀なくされることになります。

4 加害者側から交渉される場合もあるので注意!

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交通事故によって人身事故の届出を出すと、加害者側は民事の損害賠償義務だけでなく、「行政処分」と「刑事処分」の対象にもなります。

行政処分は、違反点数の加算や免許停止などがあり、刑事処分になると罰金や懲役が課せられます。

そのため、加害者側から「治療費の対応はするので、警察に診断書は出さないで欲しい」といわれるケースもあるでしょう。しかし前述したとおり、警察に届出を提出しなかった場合、被害者側が不利益を被ったり、後遺障害等級の認定が難しくなったりする可能性があります。

したがって、加害者側から交渉された場合も、後々のリスクを考えて人身事故として届出を出すのが一番でしょう。

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5 交通事故で怪我をした場合は「人身事故」として届出を出すのが安心!

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今回は、人身事故入手不能理由書の記載内容や、注意点など解説いたしました。人身事故入手不能理由書は、「自賠責保険」を請求する際に必要な書類となるので、作成しなければ自賠責保険金の請求はできません。

しかしながら、交通事故で怪我をした場合は、そもそも人身事故として届出を出すべきです。人身事故の届出を出さないことで、後々さまざまなリスクが生じる可能性があります。

人身事故の届出を出さなかった場合、人身事故入手不能理由書で「軽傷だと思った」と理由を記載するケースがほとんどです。保険会社から「この人は長期的な治療は必要ない」と判断され、治療費の打ち切りも早くなる可能性があるということです。

また、過失交渉で揉めた場合も、人身事故の届出を出していないことで、証拠不十分となり被害者の方が不利益を被る可能性も少なくありません。後になって長期的な治療が必要になったり、過失交渉で揉めたりする可能性もゼロではないということです。

これらのリスクを考えると、交通事故で怪我をした場合は、人身事故として届出を出しておくのが安心でしょう。

もし、人身事故の届出について判断に困ってしまったり、人身事故入手不能理由書の提出で悩んだりした場合は、交通事故に精通している弁護士に相談するのがおすすめです。

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