遺贈寄付の手続き方法やメリット、寄付先まで弁護士が解説

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弁護士 大隅愛友

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遺贈寄付の手続き方法やメリット、寄付先まで弁護士が解説

「自分が亡くなった後に、何か世の中のためになるものを残したい」

「いつもがんばっているあの団体(個人)を応援したいけれど、生前に寄付してしまうと自分の生活が不安」

などとお考えではありませんか。

そんなときは遺贈寄付をすることで、亡くなった後に自分が生きた証として社会貢献ができます。

また遺産から寄付をするので、生前の生活にも影響はありません

最近活用されることが多く注目されている遺贈寄付について、遺贈寄付とは何か、さらには手続き方法やメリット、注意点や寄付先まで相続に強い弁護士が詳しく解説します。

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1 遺贈寄付とは

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一般的に遺贈寄付とは、個人が亡くなった後、遺言によって特定の団体や個人に遺産の一部または全部を寄付することです。

広い意味では、相続人が被相続人の遺志により寄付することのほかに、生命保険・信託による寄付も含まれます。

「社会に貢献したい」「誰かを応援したい」と思っていても、生前の寄付には大きなハードルがあることも。

なぜなら、死ぬまで生活のためにあとどのくらいのお金が必要なのかわからず、寄付することに躊躇してしまうからです。

その点、遺贈寄付は亡くなったあとに残った財産から寄付できるため、生前の生活に必要なお金の心配はいりません。

ここでは、次の3つの遺贈寄付について順に解説します。

  • 遺言によって遺産を寄付すること
  • 相続人が被相続人の遺志により寄付をおこなうこと
  • 生命保険・信託により寄付をすること

1-1 遺言によって遺産を寄付すること

生前に遺言書を書いておき、遺言書に従って自分が寄付したい団体(個人)に遺産を寄付することです。

遺贈寄付のやり方には、以下の2つがあります。

  • 特定遺贈
  • 包括遺贈

それぞれ解説します。

①特定遺贈

特定遺贈とは、財産を特定しておこなう遺贈のこと。

たとえば「Aの不動産をBに譲る」とか、「C銀行の預金300万円をDに譲る」などと遺言書に書いて遺贈するのです。

この場合、特定遺贈の受取人(受遺者)は、遺産分割協議の参加なしで遺産を受けとれます。

また、被相続人の負債を受け取ることもありません。

しかし遺言書を書いてから時間が経ってしまい、記載したお金(物)がなくなったときは、遺贈寄付が成り立たなくなります。

「A銀行の預金300万円をBに遺贈する」と遺言書に書いていたとしても、死ぬまでにA銀行の預金300万円を使い切っていれば遺贈寄付はできません。

②包括遺贈

包括遺贈とは、財産内容を特定せずに遺産の割合を指定しておこなう遺贈のこと。

たとえば「財産の50%をAに遺贈する」とか、「財産のすべてをBに遺贈する」などと遺言書に記載して遺贈寄付するのです。

包括遺贈は、他の相続人と同じ権利や義務を負うことになり、遺産分割協議にも参加する必要があります。

【関連記事】遺産分割調停に必要な費用とは?相場・手続き方法を解説

相続財産の中に借金が含まれていれば、マイナスの財産も引き受けなければなりません。

1-2 相続人が被相続人の遺志により寄付をおこなうこと

被相続人の遺志を受け継いで、相続人が遺贈寄付をおこなうものです。

被相続人は、どの団体(個人)に寄付したいのかを、相続人に対してエンディングノート(終活ノート)や手紙、直接言葉などで依頼します。

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1-3 生命保険・信託により寄付をすること

死亡保険金の受取人を遺贈寄付先に指定し、保険金を遺贈寄付します。ただし、受取人を法定相続人にしか指定できない保険会社もありますので、注意が必要です。

また生命保険信託で死亡保険金を信託する契約を結び、信託会社を通じて遺贈寄付する方法もあります。

2 遺贈寄付のメリットとは

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遺贈寄付のメリットのうち、代表的な3つは以下のとおりです。

  • 社会貢献できる
  • 節税効果が期待できる
  • 財産を受け継がせたい団体(個人)を自分で決められる

それぞれ解説します。

2-1 社会に貢献できる

社会貢献している団体に遺贈寄付し支援することで、自身が社会に貢献できます

下記に、寄付先団体の例をいくつかあげてみましょう。

  • 子どもの教育や貧困の支援団体
  • 生まれ故郷の災害復興支援
  • 発展途上国の支援団体
  • 障がい者の支援団体

さまざまな活動をしている団体がありますので、自分がどんなふうに社会貢献をしたいのかを考えて寄付できます。

2-2 相続税の節税効果が期待できる

遺贈寄付をすると節税効果が期待できるでしょう。

一般的には、相続税は基礎控除額を超える遺産があれば課税されます。

しかし遺贈寄付をした財産が相続税非課税の場合、控除対象として遺産総額から差し引かれ課税対象額が下がるのです(所得のある納税者の場合には、所得税控除が受けられる場合もあります)。

また遺言書による遺贈寄付と相続人による寄付とでは、下記のように相続税の扱いが異なるので注意が必要です。

【遺贈寄付の種類による相続税の扱いの違い】

遺贈寄付の種類

寄付する人

相続税の扱い

遺言による遺贈寄付

被相続人

法人へ遺贈寄付した場合、原則相続税非課税

(親族が経営する法人などへの寄付で悪質な税金逃れとみなされれば課税対象)

相続人による遺贈寄付

相続人

国・地方公共団体や認定NPO法人などに寄付した場合に相続税が非課税

(相続税の申告期限内に寄付したものが対象)

2-3 財産を受け継がせたい団体(個人)を自分で決められる

遺贈寄付では、遺言書に寄付先を記載することで、財産を受け継がせたい団体(個人)を自分で決められます

思い入れのある地域や応援したい活動をしている団体などを支援して、亡くなった後に自分の思いを託せるのです。

3 節税効果のある遺贈寄付先

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相続による遺贈寄付で節税するためには、相続税非課税となる団体に寄付することが必要です。

ここでは、相続税が非課税となるおもな遺贈寄付先を紹介します。

【例1】国や地方公共団体

まず、国や地方公共団体です。

被相続人にかかわりの深い地域に寄付することで、地域の子どもたちや老人福祉、地域経済の活性化などに使われます。

亡くなられた被相続人の思いを形にできるものです。

【例2】認定NPO法人

認定NPO法人とは、NPO法人(公益性のある、営利目的ではなく社会貢献のために活動している団体)の中で、「さらに高い公益性をもっている」と認められた法人のことです。

活動内容はさまざまなので、被相続人の遺志をくんで生前に関心をもって応援していた団体への支援ができます。

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4 遺贈寄付の注意点とは

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節税効果があり、亡くなったあとに社会貢献できるなどのメリットも多い遺贈寄付ですが、注意点もあります。

順に解説していきましょう。

4-1 遺留分で法定相続人ともめる可能性がある

遺留分とは、法定相続人に最低限保証されている相続財産の取り分です。

遺贈寄付が遺留分を侵害していれば法定相続人は遺留分侵害額請求ができるため、寄付先ともめる可能性があります。

トラブルを避けるために、遺留分を侵害しないように十分な配慮が必要です。

【関連記事】遺留分侵害額請求の調停とは?手続きの流れやポイントについて弁護士が解説

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4-2 不動産を現物で遺贈寄付すると法定相続人に課税されることがある

不動産を現物で遺贈寄付すると、法定相続人に「みなし譲渡課税」がかかることもあります。これは、不動産を取得したときの価格よりも寄付したときの時価が高い場合に課税されるもの。

不動産を受け取っていない法定相続人に課税されるので、注意が必要です。

4-3 相続税が課税される団体(個人)もある

遺贈寄付をする際に、相続税が課税される団体(個人)もあります。

 

相続税が課税されるか非課税か

遺言による寄付の場合

法人に寄付なら非課税

個人や法人格をもっていない団体は原則として課税される

(公益的事業をしていると認められれば非課税になることも)

相続による寄付の場合

いったん相続人が財産を受け取るので、原則的には相続税が課税される

(特例措置として国や地方公共団体、認定NPO法人など特定の公益法人に寄付すると非課税。一般社団法人や一般財団法人、認定を受けていないNPO法人、宗教法人などは対象外)

4-4 希望先の団体(個人)から遺贈寄付の受取を拒否されることもある

寄付をしたいとこちらが願っても、希望先の団体から受取を拒否されることがあります。

たとえば、遠方で使い道のない土地を寄付されても困るでしょうし、相続争いに巻き込まれたくないと考える団体もあるでしょう。

拒否された財産は宙に浮いてしまい、法定相続人の遺産分割協議でどうするかを決めることになります。

5 遺言書による遺贈寄付の手続きの進め方

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ここでは、遺言書による遺贈寄付の手続きの進め方を順に紹介します。

5-1 人生を振り返り、遺贈寄付について家族や専門家と相談する

これまでの人生を振り返り、遺贈寄付でどのように社会貢献したいかを考えます。

それとともに相続人である家族にも、遺贈寄付の意思を表明しておきましょう。

なぜなら相続人が遺贈を認めたくないと主張すれば、もめることも考えられるからです。

遺贈寄付したいという自分の思いを家族に伝え、理解してもらうことが大切でしょう。

そして弁護士などの専門家に相談し、遺贈の手続きの流れを理解しながらすすめていきます。

5-2 遺贈寄付で応援したい団体(個人)を決める

家族や専門家と相談する中で、遺贈して応援したい団体(個人)を決めていきます。遺贈する相手は、一カ所でなくてもかまいません。

希望の寄付先が見つかれば、その団体に遺贈寄付を受け入れてもらえるかどうかや手続き方法などを確認します。

5-3 遺言執行者に依頼する

遺贈寄付を円滑におこなうため、遺言執行者を指定し依頼します。

遺言執行者とは、遺言どおりに相続手続きなどをおこなう人のことです。もし遺言執行者が選任されていないと、面倒な手続きが必要になるので注意しましょう。

家族や友人などの個人を指定もできますが、遺言執行者が依頼人より先に亡くなるリスクもあります。

また専門的な知識や中立の立場が必要なことから、弁護士や信託銀行などの専門家に依頼するのもおすすめです。

【関連記事】遺言執行者を弁護士にするメリットは?役割や選任の方法について弁護士が解説

5-4 遺言書を作成し保管する

まず、どの遺言書を作成するかを決めます。遺言書は種類によって特徴があり保管場所も変わるからです。

ここでは代表的な以下の2つを解説します。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言

【公正証書遺言と自筆証書遺言の違い】

 

公正証書遺言

自筆証書遺言

特徴

公証人に作成してもらう遺言書

本人が直筆で書いて作成する遺言書(財産目録はパソコンなどでも可)

メリット

・無効になりにくく、紛失することもない

・改ざんされるリスクがない

・手軽に作成できる

・作成費用がかからない

・証人不要

デメリット

・手続きが面倒

・費用がかかる

・証人2人の立ち合いが必要

・形式が厳格に定められているため無効になりやすい

・自分で文字を書く必要がある

保管方法

・公証役場で保管

・自分で保管

(遺言書保管制度を利用すると法務局で保管できるが費用がかかる)

【関連記事】公正証書遺言の作成に必要な書類は?費用やメリットを分かりやすく解説

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このように、要件を満たしていれば、公正証書遺言も自筆証書遺言も効力の差はありません。

しかし自筆証書遺言は形式不備のため無効になるリスクが大きく、注意して作成する必要があります。せっかく作成した遺言書が無効になっては元も子もないでしょう。

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その点公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書のため、無効になるリスクは基本的にありません。

5-5 亡くなった後、遺言書を開示し執行する

まず亡くなったことを、家族などから遺言執行者に知らせます。

遺言執行者に知らせないと円滑に遺言を執行できませんので、誰が連絡を入れるかを事前に決めておくことが必要です。

連絡を受けた遺言執行者が、遺言書を開示し遺言書の内容を実現します。

6 遺贈寄付は自分らしく生きた証を残せる選択肢のひとつです

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今まで生きてきたなかで、だれもがやり残したことや支援したいことなど、大切なことがあるでしょう。

そのことで何か社会貢献ができないかと考えても、生きている間には自分自身の生活もあり難しい場合も。

しかし遺贈寄付なら今の生活はそのままで、亡くなったときに残った財産から寄付ができます。

遺贈寄付は、自分らしく生きた証を残せる選択肢のひとつです。

しかし遺贈寄付をするには、法定相続人との関係や複雑な税務問題、有効な遺言書を作成することなどさまざまな注意点もあります。

遺贈寄付の手続きを円滑にすすめ、自分の応援したい団体(個人)へ確実に寄付するためには、弁護士などの専門家に相談しながら手続きをすることがおすすめです。

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