交通事故のお見舞い|被害者の注意点とは?見舞金の相場・賠償金との関係性

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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交通事故のお見舞い|被害者の注意点とは?見舞金の相場・賠償金との関係性

交通事故が起きると、加害者が謝罪の意を表すために、被害者へ見舞金を渡すことがあります。

そもそもの目的が誠意を見せることなので、相場は事故の規模によって異なるもの。

心や体に傷を負った被害者は、せめてもの形として見舞金を受け取って問題はありません。

しかし、なんでもかんでも受け取っていると、加害者にとって有利な状況を作り上げてしまうおそれがあります。

この記事では、被害者が不利な状況にならないために知っておくべき注意点や、相場を超えた見舞金を受け取ることの危険性を、詳しく解説します。

1 【交通事故のお見舞い】見舞金とは?2タイプあります

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加害者から被害者に支払われる見舞金は義務ではなく、あくまで任意です。 

社会的な礼儀として加害者の謝罪の気持ちを表すために渡されるものなので、渡されない場合に被害者側が請求することはできません。

ただし、被害者によっては見舞金がないことで「誠意が見られない」として示談が締結されず、加害者の刑事処分が重くなるなどの事例もあります。

「見舞金」には大きく2タイプあり、下記のとおりです。

①加害者が支払う見舞金

②保険会社が払う見舞金

それぞれについて簡潔に解説します。

1-1 ①加害者が支払う見舞金

加害者が見舞金を支払うかどうかは任意ですが、社会的礼儀として言われることが多いため、話をスムーズに進めるためにも支払われることがほとんどです。

とはいえ法的義務ではないため、不要であると思えば支払う必要はありません。

現金の代わりに菓子折りやフルーツ、花などが贈られることもありますが、お見舞いの際に渡す品とは別物として考えておくべきでしょう。

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この記事ではおもにこの「加害者が支払う見舞金」について詳しく解説していきます。

1-2 ②保険会社が払う見舞金

被害者が「搭乗者傷害保険」付帯の任意保険に加入している場合には、保険会社から「見舞金」と呼ばれる保険金がおりることがあります。

上記でご紹介した加害者による「謝罪」としての見舞金とは本質が異なり、保険の契約内容にもとづいて支払われるものです。

支払いを受けるためには、保険金請求の手続きをする必要があります。

金額の設定方法はおもに2つあり、下記のとおりです。

・日額計算:入通院の日数×日額の保険金額

・部位症状別計算:部位と症状それぞれに定められた金額

生死に関わるほど重症の場合には「部位症状別」で計算をしたほうが保険金が高くなることがあります。

一方で、打撲や軽い怪我の場合には「日額」で計算をした方が保険金が高いことが多いです。

なお日額計算の場合には、事故から180日以内にした入通院ぶんだけが適用されます。

2 交通事故の見舞金の相場は?

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交通事故が起きたときに加害者が支払う「見舞金」は、加害者の気持ちや事故の規模次第で金額が変わるため、「相場はない」と言われる傾向があります。

では一般的にいくら払う人が多いかというと、下記を参考にしてみてください。

・入通院が4日以下:1〜3万円

・入通院が5日以上:5〜100万円

いずれも部位や病状によって金額が異なります。

相手側の経済面に余裕がなければ、金額としては小さくなってしまうこともあるでしょう。

ただし、金額は大きければ良いというものでもなく、状況によっては加害者を有利にさせてしまう可能性があります。

3 交通事故で加害者から見舞金を受け取るリスクとは?

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交通事故で加害者が見舞金の支払いを申し出てきたとき、下記のようなリスクを念頭においてから受け取るべきです。

①受け取れる賠償金が減る

②加害者の刑事罰が軽くなる

それぞれのリスクと対処法について、詳しく解説します。

3-1 ①受け取れる賠償金が減る

加害者から見舞金を受け取っても、原則としては賠償金から差し引かれることはありません

賠償金は心身への損害に対して払われる物であり、見舞金は危害を加えたことに対する気持ちの表明をしたいときに払うものなので、本質が異なるからです。

しかし、高額すぎる金額を受け取った場合には、単なる「気持ち」や「社会的礼儀」としての枠を超えており、賠償金の一部であると捉えられてしまうこともあります。

また加害者が、賠償金の一部を前払いしていたつもりであった場合にも後々、損害賠償金額から差し引かれてしまう可能性があります。

被害者は必ず、損害賠償の前払いとしてではなく、あくまで「見舞金」であることを確認してから受け取るのをおすすめします。

✔️示談金に含むつもりの有無を確認しよう

見舞金を「示談金に含むつもり」の有無についても、加害者に確認しておくのがおすすめです。

加害者としては示談金のつもりで渡した見舞金を、被害者が示談金として認識していなかった場合に、後々の示談交渉でトラブルの原因になることがあります。

なお、損害賠償額は原則、示談が締結してから受け取るものです。

示談の前に治療費などお金が必要になった場合の対処法については、下記で詳しく解説します。

3-2 ②加害者の刑事罰が軽くなる

被害者がいる人身事故では、起訴された加害者は刑事罰を受けることになります。

もし被害者が見舞金を受け取っている場合には、刑事罰が軽くなる可能性が高いです。

加害者は反省して見舞金を払っており、被害者はその謝罪を受け取り認めた、と判断されることは自然であり、刑事罰が軽くなるほか不起訴になることもあります。

どうしても許せない事故になった場合にこそ、簡単に見舞金を受け取るべきではないでしょう。

✔️保険会社の見舞金は関係ない

保険会社から受け取る「見舞金」はあくまで保険会社からの「保険金」なので、加害者から受け取る賠償金とは関係がありません。

保険会社から保険金を受け取っても、加害者から受け取る賠償金が減ることはなく、刑事罰が軽くなることもありません。

4 交通事故で被害者が見舞金を受け取る際の留意点

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交通事故で被害者が見舞金を受け取るとき、不利にならないために下記を気をつけておくことをおすすめします。

・高額な見舞金の請求はしない

・感情が荒ぶるなら受け取らない

・示談交渉は治療が終わるまでしない

見舞金は大きな金額を受け取れるほど嬉しいと感じる人もいるかもしれませんが、場合によっては受け取ったことが裏目に出ることもあるでしょう。

特に感情が荒ぶるような事故だった場合には、相手には刑事罰を正しく受けてもらいたいと感じるものでしょう。

「見舞金で相手に金銭的な損失が出るなら」などの怒りの感情は一度おさえて、示談交渉についても治療が終わるまで待ち落ち着いておこなうことが、後々の自分を守るはずです。

5 示談前に賠償金が必要!受け取る方法2つ

治療に専念するあいだ働くことができないと、生活が苦しくなることもあるでしょう。

賠償金は示談の後に払われることが一般的ですが、示談の交渉はほとんどの場合に数ヶ月かかるため、賠償金を示談の前に払ってもらう手段が存在します。

①自賠責保険から仮渡金を受け取る

②相手の保険会社から内払金を受け取る

それぞれの手段について、解説します。

5-1 ①自賠責保険から仮渡金を受け取る

自賠責保険から損害賠償金の一部を「仮渡金」として、先渡ししてもらうことができます。

仮渡金の金額は、負傷の程度によってあらかじめ定められており、申請をするとスムーズに渡してもらえるでしょう。

なお、あくまで総損害額となる損害賠償金の一部を「先渡し」してもらうだけなので、最終的にもらえる損害賠償金から差し引かれます。

デメリットとしては、設定されている金額は大きくないため、生活にあてるには少ない点です。

・負傷:5〜40万円ほど

・死亡:290万円ほど

また、万が一「仮渡金」として受け取った金額が、最終的な損害賠償額を上回った場合には、差額分を自賠責保険会社へ返還する必要があります。

②相手の保険会社から内払金を受け取る

相手が任意で保険に入っている場合には、損害賠償金の一部を「内払金」として先に支払ってもらえることがあります。

ただし、保険会社が内払金に対応しているかどうかは保険会社次第なので、先払いが必要である理由は自力で述べなくてはいけません。

こちらも損害賠償金の一部を先払いしてもらうだけなので、最終的に渡される損害賠償額は内払金を差し引いた金額になります。

損害賠償額を上回る内払金を渡すことは、保険会社にとって差額分の回収へのリスクをともなうため、内払金を多めに見積もってもらえることはほとんどないでしょう。

6 交通事故の加害者が不誠実。お見舞いに不満なときの対処法

交通事故を起こした加害者にとって、被害者と穏便な関係性を築くことが今後の刑事罰の内容にも響きます。

一方で被害者の感情としては、お見舞いや謝罪の電話、見舞金がないことにより、さらなる不満がつのることもあるでしょう。

そんなときにも、刑事裁判にて意見を述べることが可能です。

6-1 加害者の刑事処分の結果が変わる

交通事故の被害者は検察の判断により、正式な刑事裁判への参加が認められることがあります。

処罰の決定を決める裁判官は人であり、下記のような項目についても考慮しています。

・被害者の感情

・加害者の反省の有無

・示談の締結の有無

つまり、「加害者による反省が見られない」理由を裁判所で意見することにより、加害者への刑事罰は重くなることが多いです。

6-2 刑事裁判が終わるまで示談は締結しない

裁判の前に示談が締結されているいるかによっても、処罰の内容が異なる傾向があります。

示談が締結されておらず、加害者側の反省が見られないあるいはじゅうぶんでない場合には、刑事処分が重くなる可能性も高いでしょう。

状況にもよりますが、どうしても加害者が憎く許せない理由があるのであれば、刑事裁判までに示談は締結しないほうが良いかもしれません。

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7 【まとめ】交通事故の見舞金はよく考えてから受け取ろう

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交通事故の見舞金は受け取って問題ないことが多いですが、目の前の金額に目がくらみやみくもに受け取ってしまうと、落とし穴にはめられてしまうことがあります。

あとで「示談金のつもりだった」「賠償金の一部として払っていた」などのトラブルを起こさないためにも、入念な確認をしながら見舞金を受け取るべきでしょう。

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