後遺障害診断書のもらい方~手続きや取得のポイント
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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交通事故に遭遇した際、後遺症が身体に残ってしまうと、その後の生活に大きな影響を及ぼします。
『後遺障害診断書』は、そのような状況において、とても重要な役割を果たすものになります。交通事故で受けた影響を適切に評価し、賠償金の支払いを得るための助けになるものです。
本記事では、交通事故問題に詳しい弁護士が、後遺障害診断書の役割、取得方法、注意点などの情報について解説します。
1 後遺障害診断書とは?
交通事故の後遺障害診断書は、交通事故により被害者が受けた身体的または精神的な障害の程度を診断し、記録するための書類です。
後遺障害認定、損害賠償の請求や自動車保険の申請において、非常に重要な役割を果たします。
後遺障害診断書には以下のような項目が記載されます。
1-1 記載されている主な項目
- 基本的な情報(名前、年齢、性別など)
- 受傷日時・症状固定日・入院期間・通院期間
- 診断された傷病名や自覚症状
- 各部位の後遺障害の内容(具体的な症状、機能の制限、検査結果など)
- 障害内容の増悪・緩解の見通しなど
- 診断日・診断書発行日・診断した医師など
1-2 誰に書いてもらうのか
後遺障害診断書は、医師によって書かれます。具体的には、被害者が治療を受けている医療機関の担当医が作成します。
1-3 いつ書いてもらうのか
後遺障害診断書は、「症状固定」、つまりこれ以上治療しても症状の改善が期待できない状態になってから作成することになります。そのため、後遺障害診断書には、『症状固定日』が記載されることになります。
症状固定の時期は、事故による負傷の種類、程度にもよりますが、6か月程度は治療を継続する必要があると言われています。担当医と相談しながら適切な期間、、治療を受けることが後遺障害の症状固定の前提です。
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1-4 柔道整復師や鍼灸師などが書くことができるのか
後遺障害診断書は医師のみが作成できます。柔道整復師や鍼灸師などの医療従事者が作成することは認められていません。
2 後遺障害診断書の重要性について
後遺障害診断書は、後遺障害認定や賠償請求の過程で不可欠な書類となります。後遺障害の等級が重いほど慰謝料等の損害賠償金は増えることになります。
2-1 後遺障害等級の審査基準となる
交通事故によって生じた後遺障害は、その程度によって後遺障害等級に分類されます。
この等級は要介護1級・2級、1級〜14級まであり、1級が最も重い障害を表します。後遺障害等級の審査は、後遺障害診断書に記載されている事項に基づいて行われます。
診断書には事故の詳細、被害者の症状や治療経過、障害の程度や影響などが記載されており、これらの情報が後遺障害等級の決定に影響することになります。
そのため医師には、事故によって生じた自覚症状や自覚症状の一貫性・連続性と各種の検査結果などの客観的・専門的な他覚所見ついて、具体的に記述してもらう必要があります。
2-2 後遺障害慰謝料と逸失利益の請求のため
後遺障害等級が認定された場合、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。
慰謝料は精神的な苦痛に対する補償であり、逸失利益は後遺障害のせいで得られなくなった利益(給与や収入など)を補償するものです。
それぞれの金額については、後遺障害等級が左右することになりますので、後遺障害診断書はとても重要な書類であると言えます。
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2-3 後遺障害等級は認定されないことも
後遺障害等級は必ずしも認定されるわけではありません。これは被害者の障害が軽度である場合や、障害が交通事故によるものでないと判断される場合などが該当します。
また、障害の症状が一時的であることや、治療によって改善可能であると判断された場合も、後遺障害等級は認定されないことがあります(非該当)。
その場合、後遺障害慰謝料・逸失利益は請求できなくなってしまいますので、医師が記載する後遺障害診断書の内容を確認することがとても重要になります。
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3 後遺障害診断書のもらい方
交通事故の後遺障害診断書は、交通事故によって被害を受けた方が保険会社から適切な補償を受けるために必要な重要な書類です。その入手方法について以下に詳しく解説します。
3-1 正式な書式が必要になる
後遺障害診断書の作成には、特定の書式が必要です。
保険会社に対して、後遺障害の申請を行う旨を伝えれば、後遺障害診断書の書式を送付してもらうことができます。また、病院が後遺障害診断書の書式を保有していることもあります。
3-2 主治医に記入してもらう
書式を入手したら、それを主治医の医師に渡して、被害者の病状や障害の詳細を記入してもらいます。正確かつ詳細な記述が求められますので、医師とよく相談することが大切です。
作成者は、有資格者である担当医であり、被害者・患者が自ら記載することは認められていませんので注意してください。担当医によく伝えることが重要です。
3-3 後遺障害診断書の作成期間
後遺障害診断書の作成は、病院や医師の状況によって異なります。早ければ数日で作成してもらうことができますが、1か月程度かかることもあります。
3-4 作成にかかる料金
後遺障害診断書の作成には実費で料金が発生します。費用は病院によって異なりますが、一般的には5000円から1万円程度が目安です。
後遺障害が認定された場合には、後遺障害診断書の作成費用を保険会社や加害者に請求することが可能です。
3-5 後遺障害診断書を保険会社に提出する
後遺障害診断書が完成したら、保険会社に提出し、後遺障害等級認定の手続きを始めることになります。
手続きには『事前認定』『被害者請求』といった2つの方法があります。
『事前認定』は加害者が加入する任意保険会社へ、『被害者請求』は加害者が加入する自賠責保険会社へ手続きを行うことになります。
4 後遺障害診断書の作成に当たって注意すべき点
後遺障害診断書の作成に当たっては、被害者の訴えや医師の診察結果が適切に記載されることが重要です。
4-1 後遺障害診断書を書いてもらえるか確認しておく
後遺障害診断書の作成は、症状固定後に記載されるものですから、治療の段階においては依頼しても受け付けてもらえません。
ただ、症状が固定していても、病院や医師の方針として、後遺障害診断書の作成は行わないといったケースも珍しいことではありません。
そのため、まずは病院や医師に書いてもらえるのか確認することが大切で、書いてもらえないようであれば、事情を説明して説得することや、ほかの病院を探さなくてはなりません。
4-2 医師に対して自覚症状を具体的に伝える
後遺障害診断書には自覚症状を記載してもらう必要がありますので、医師に対しては具体的にしっかりと伝えることが必要です。
痛みが生じる部位や、その頻度・強度、生活にどのような影響が生じているのかなど、メモに書いて渡すなど、可能な限り具体的な情報を提供しなければなりません。
その際に、漏れている情報、不十分な情報があった場合には、その部位について後遺症が残っているとしても、後遺障害の審査対象になりません。
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4-3 検査は十分に実施してもらう
後遺障害の具体的な状態を詳細に把握するためにも、MRIやCT、X線、血液検査などの検査を十分に実施してもらう必要があります。
これらの検査結果は診断書に詳細に記載されることになり、後遺障害の証明となります。
5 医師に後遺障害診断書を書いてもらえないケース
後遺障害診断書は、交通事故による後遺症が定まった場合に作成されるもので、一定の状況下では医師から作成してもらえないケースがあります。具体的には以下のような状況が挙げられます。
5-1 1回しか病院に行っていない
後遺障害診断書は、交通事故による傷害の内容、治療状況、検査結果、傷害の残存状況、自覚症状、他覚所見、治癒の見通し等が記載されているものです。
したがって、1回しか病院に通院していない場合、医師は症状の経過を把握できていないため、診断書の作成を適切に行うことが難しいと考えられます。
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5-2 転院して間もない
転院した場合においても、経過を十分に把握していないため、後遺障害診断書の作成を断られる可能性があります。
そのような場合においては、治療した病院での治療経過を取り寄せ、転院先の病院で記載してもらう必要があります。
5-3 症状固定の時期ではない
後遺障害診断書の作成には、後遺障害の程度を適切に評価するため、症状が固定している状態が必要となります。
そのため、治療中や回復過程にある場合、症状はこの先も変化することが考えられるため、後遺障害の程度を正確に評価することが困難となります。
ただし、上記でもお伝えした通り、症状固定に至っていない時期であるとしても、後遺障害診断書を作成してもらえるかどうか、確認しておくことは大切です。
6 まとめ:後遺障害診断書の取得で迷ったら弁護士へ相談しましょう!
交通事故による後遺症は、生活に大きな影響を及ぼすことになります。そのため、後遺障害診断書をもらうことはとても重要で、補償を請求するための重要な証明書となります。
後遺障害の程度により等級が分かれており、その等級により補償額が変わることを理解しておく必要があります。また、診断書を作成する際には、症状を明確に伝えること、必要な検査を受けることなどが大切になります。
適切な補償を受けるためにも、後遺障害診断書の役割と取得方法を理解し、活用することが重要です。不安や疑問があれば専門家である弁護士へ相談資しましょう!
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