限定承認とは?相続放棄との違いや特徴、メリット・デメリットを弁護士が徹底解説

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限定承認とは?相続放棄との違いや特徴、メリット・デメリットを弁護士が徹底解説

相続をするときには、「限定承認」「単純承認」「相続放棄」の3つのなかから選ぶことができます。

限定承認」を選ぶ人は主に、-負債を相続するリスクを小さくして財産のプラス部分だけを相続したい人です。

たとえば、借金があるか明確ではないときや、借金は払いたくないけど一部の財産を引き継ぎたいときには、「限定承認」が適切な選択肢になることもあります。

ただし、他の選択肢の特徴もおさえた上で最終判断をするべきであり、注意点にも目を通してから決断しなくては後悔するかもしれません。

実際に、限定承認の利用件数は年間1000件前後であり、約15万件を超える相続放棄と比べて非常に少ない現実があります。

この記事では、限定承認が何なのかから、他の選択肢との違い、メリット・デメリットまで詳しく解説します。

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1 限定承認とは?特徴を解説

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まず「相続」とは基本的に、引き継げばプラスになる財産だけでなく、引き継げばマイナスになる借金も対象として発生するものです。

そこで「限定承認」とは、被相続人(故人)の抱える財産部分にかぎり、借金を相続し支払えばよくなるというのが特徴です。

▼限定承認の特徴
・借金全額の相続が不要になる
・プラス財産を相続するためには相当の費用を支払う必要がある
・プラス財産で返済し切れない借金ぶんは相続しなくて良い

たとえば、居住のための住宅や、被相続人の形見としてとっておきたい財産も、借金を理由に手放す必要がなくなるかもしれない、という手段が「限定承認」です。

ただしあくまで、引き継ぎたいプラス財産に相応する金額の支払い義務が生じるため、「借金全額を放棄してプラス財産だけ受け取れる」というわけではありません。

つまり「借金があるもののプラス財産を引き継ぎたい」という場合には、プラス財産ぶんの支払い能力が必要になります。

しかし、プラス財産の相続ができつつ、借金の合計額すべてを支払う必要はなくなるのが特徴です。

下記ではよりわかりやすいよう、ケースにあてはめて解説していきます。

1-1 「限定承認」を選択すべきケースとは?

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限定承認を選ぶべきなのは主に、下記の2パターンのいずれかにあてはまるときです。

①被相続人の財産が明確でなく借金の可能性がある
被相続人に借金があるのが明確だが、相続で引き継ぎたい財産がある

たとえば、

例) 500万円の借金を抱えているとわかっている被相続人の財産のなかに、どうしても譲り受けたい100万円のダイヤモンドがある場合

などは、限定承認を選ぶべきときであるといえます。

なぜなら限定承認をすることで、借金の債務者(お金を貸した人)へ支払わなくてはいけないのは、ダイヤモンドの価値である100万円だけになるからです。

プラス相続となる財産の範囲(ダイヤモンドの価値100万円)で支払いをすれば、相続することができる、というのが限定承認の特徴です。

1-2 「限定承認」と「単純承認」との違いとは?

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「限定承認」ではない選択肢として一般的なのは、「単純承認」です。単純承認とは、「被相続人の借金と財産どちらも相続する」ことです。

上記の例にあてはめて考えてみましょう。

「単純承認」をする場合には、100万円のダイヤモンドが相続の対象となるだけでなく、500万円の借金も相続してしまいます。

つまり、100万円のダイヤモンドを受け継ぐだけでなく、500万円の借金の支払いもしなくては行けなくなる、というのが単純承認の特徴です。

1-3 「限定承認」と「相続放棄」との違いとは?

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被相続人の抱えている借金を受け継ぎたくないときの選択肢といえば、「相続放棄」があげられます。

相続放棄とは、そもそも相続がなかったものとしてみなされるため、被相続人の抱える借金や財産などすべての相続ができなくなるのが特徴です。

相続放棄をすべきケースは主に、下記があげられます。

・借金ばかりで責務超過になるとき
・財産が多すぎて相続税が支払えないとき
・兄弟姉妹間の相続争いから身を引きたいとき
・プラス財産もすべて手放して問題ないとき

「プラス財産と借金どちらも引き継がない方が良い」と判断した人が、個人の判断で相続を放棄することができます。

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1-4 「限定承認」「相続放棄」「単純承認」の違いを比較

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限定承認と相続放棄、単純承認の特徴をまとめると、下記の通りです。

 

限定承認

相続放棄

単純承認

手続き可能な期間

自分に相続があると知ったときから3か月以内

自分に相続があると知ったときから3か月以内

手続き不要(限定承認・相続放棄の手続きがない場合に自動で設定される)

プラス財産の相続

可能

不可能

可能

借金の相続

引き継ぎたいプラス財産の範囲で必要

不要

必要

申し立て

相続人が全員共同で申述する必要あり

相続人が各自で申述可能

不要

相続人が複数いる場合、一部の人が各自で相続放棄をした場合には、相続放棄をしていない人たちだけで共同し、限定承認を申し立てすることが可能です。

なお、限定承認をしたいのであれば、手続き可能な3か月以内に相続人全員で連絡を取りあい、申し立てをしなくてはいけません。

たとえば、日頃は連絡をとっていない兄弟がいる場合にも、限定承認をするためには共同で申し立てをする必要があるため、できるだけ相続発生の前から動いておけると良いです。

単純承認は特に手続きは不要なので、限定承認や相続放棄の意思がなければそのまま、すべての財産と借金に関する相続手続きを始めることになります。

2 限定承認の注意点!

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限定承認をする場合の注意点は主に、限定承認の申立をしなくてはいけない期限の厳守です。

限定承認と相続放棄の手続きは必ず、相続人が「自分に相続があると知ったときから3か月以内」にしなくてはいけません。いずれも家庭裁判所へ申立をする必要があります。

必ず下記の2点をおさえて、間違いのないように手続きをおこないましょう。

①3か月を超えると自動的に単純承認になる
②限定承認の手続き完了前に財産に手をつけると単純承認になる

もし「限定承認」や「相続放棄」として申立てをしないまま3ヶ月を超えてしまった場合には、自動的に「単純承認」したものとみなされてしまいます。

さらに、限定承認の手続きが終わる前に、被相続人の財産処理をおこなった場合にも、「単純承認」したものとみなされてしまうので注意しましょう。

財産処理としてはたとえば、被相続人の「不動産の売却」や「預貯金の引き出しや解約」などがあげられます。

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3 限定承認のメリットとは?

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限定承認にはメリットとデメリットがあります。

まずはメリットからお伝えしていきます。

①巨額の借金の心配がない
②必要な財産を残せる
③後から出てきた財産も相続できる

限定承認のメリットは主に、借金の不安から解放されながら、必要な相続ができることです。

詳しくご紹介します。

3-1 巨額の借金の心配がない

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もし被相続人に巨額の借金がある場合にも、まるまる相続する必要がなくなるため、相続財産をうわまわる借金を肩代わりする心配がないのは、大きなメリットです。

あくまで相続財産の範囲内での返済義務になるため、相続人に返済できない額の相続にはなりません。「もし隠れて借金していたらどうしよう…」と不安があるなら、単純承認をするよりも安心です。

3-2 必要な財産を残せる

たとえば相続人の自宅が相続の対象となっている場合、相続ができないと住まいを失うことになってしまいます。

限定承認をすると原則としては、不動産は競売にかけられ、それを買うことで所得するという手順をふまなくてはいけません。

しかし限定承認の場合には、第三者に落札されてしまう前に優先して購入できる「先買権」が与えられます。相続人が購入できるのであれば、不動産を自分のものとして残すことができるということです。

家庭裁判所が選任した鑑定士により不動産評価額よりも高い金額で購入する必要がありますが、不動産を相続する有力な手段となるでしょう。

なお、相続放棄をした場合には先買権がないため、競売にて他者と競って落札する必要があります。

3-3 後から出てきた財産も相続できる

もし相続放棄をしてしまった場合、あとから大きなプラス財産が発見されたとしても、相続することはできません。

一方で限定承認をしておけば、あとから見つかったプラス財産も相続することができるため、結果的に大きなプラスになる可能性も見込めます。

4 限定承認のデメリットとは?

限定承認のデメリット.jpg

限定承認にはデメリットもあります。

①連帯保証人としての債務は相続される
②共同相続人すべての人から同意が必要
③精算手続きに手間がかかる

限定承認のデメリットは主に、申立からその後まで、手間がかかることです。

詳しく解説していきます。

4-1 連帯保証人としての債務は相続される

被相続人が連帯保証人になっていた場合、債権者から請求があれば、支払いをする義務が生じます。

支払いの義務もプラス財産の範囲内とはなりますが、相続をするという性質上「権利」と「義務」がすべて引き継がれる点は注意しましょう。

4-2 共同相続人すべての人から同意が必要

限定承認をする場合には、共同相続人すべてが同意して、申立をする必要があります。

あらかじめ戸籍を確認し、相続人を把握しておかなくてはいけません。

裁判所へ申請書を提出するための時間なども加味したうえで、余裕をもって手続きを始めることをおすすめします。

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4-3 精算手続きに手間がかかる

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限定承認の場合、申立をして受理された後にも、財産の範囲内での支払いから、超過分の債務を負わないための手続きまで、さまざまな手間がかかります。

一方で相続放棄では、家庭裁判所へ申述を提出し受理されれば手続きが終了するため、手間がほとんどかからずに済みます。

とはいえ、プラス財産を上回る借金があるうえで、手間をかけてでも相続したい財産がある場合には、限定承認としての申立をするしかないかもしれません。

5 まとめ:限定承認は期限内に忘れず申し立てよう!

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限定承認は、プラス財産の価値にあたる支払いさえすれば、余りの借金ぶんは相続することなく、引き継ぎたいプラス財産部分だけを相続することができます。

ただし、申請可能な期間は「自分に相続があると知ったときから3ヶ月以内」と決められているのが最大の注意点です。

うっかり申立を忘れてしまうと、単純相続として借金も全額を相続することになります。

万が一、被相続人が大きな借金を抱えている可能性を考えたとき、手間をかけてでも限定承認をしておいた方がよいかたも、いらっしゃるのではないでしょうか。

相続放棄や単純承認などの他の相続手続と比較して、最適な手続きを選択しましょう!

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