未支給年金は相続財産になる?年金の種類による違いを弁護士が解説
2023年6月30日 10:00

監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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「親が亡くなった後に年金が振り込まれたけど、どうすればいいの?」
「未支給年金を受け取ると、相続財産として相続税を払わないといけないの?」
「年金の種類によって相続財産になるかならないかの違いがあるってほんと?」
などと、お悩みではありませんか。
大切な家族が亡くなると、深い悲しみの中でも多くの手続きをしなければなりません。未支給の年金も、はやめに手続きをとる必要があるのです。
また受け取った未支給年金が相続財産になるかどうかで、納税の仕方も変わってきます。間違えれば大きなトラブルになることも。
この記事では未支給年金は相続財産になるのか、また公的年金の未支給年金が請求できる条件や手続き方法まで、弁護士が詳しく解説します。
1 未支給年金は相続財産になるのか?
未支給年金が相続財産になるかならないかは、どのような年金であるかによって変わります。
ここでは、未支給年金とはどのようなお金なのか、また年金の種類による違いを解説しましょう。
1-1 未支給年金とは
未支給年金とは、亡くなった人が本来受け取れるはずの年金のことをいいます。
公的年金は、前月と前々月分を後払いする仕組みです。そのため、亡くなった時点では誰でも必ず受け取れていない年金が発生することになります。
亡くなった人に受け取る権利があるにもかかわらず、まだ受け取っていない年金のことを未支給年金と呼ぶのです。
1-2 未支給年金は相続財産になる?ならない?
未支給年金は、年金の種類によって相続財産になる場合とならない場合があります。
年金の種類は、大きくわけて以下の3つです。
- 公的年金:相続財産にならない
- 企業年金:相続財産になる
- 個人年金保険:相続財産になる
ここからは、年金の種類による違いを解説します。
①厚生年金や国民年金など公的年金は相続財産にならない
厚生年金や国民年金など公的年金の未支給年金は、相続財産になりません。
受け取った相続人の一時所得となるため、相続税はかからずに所得税の対象となるのです。
未支給年金の受け取り金額が、ほかの一時所得と合わせて50万円以上となる場合には確定申告が必要となります。
②企業年金は相続財産になる
企業年金の期間満了までの未支給年金は、相続財産とされて相続税の対象となります。企業年金は、簡単にいうと企業が社員に年金を支給する仕組みです。
企業年金を受け取っている間に受給者本人が亡くなった場合、未支給年金を受け取る遺族と企業には直接的な契約はありません。
亡くなった受給者から遺族が受給権をゆずり受けたかたちになります。これを「契約に基づかない定期金に関する権利」といいます。
「契約に基づかない定期金に関する権利」は、みなし相続財産として相続税の課税対象となるのです。
ただし、企業年金のうち死亡した月までの未支給年金については、公的年金の未支給年金と同じように一時所得扱いになります。
③個人年金保険の私的年金は相続財産になる
個人年金保険などの私的年金の未支給年金は、相続財産になります。
未支給年金の受け取り額が高額になる場合もあるので、相続税の納付にも大きな影響をあたえることも。
個人年金保険は、金融機関や保険会社の加入契約ごとに内容がことなります。
証書を確認したり保険会社へ問い合わせたりするなど、未支給となっている年金の受け取りができるのかどうかを確認する必要があるでしょう。
2 公的年金の未支給年金を請求できる条件
ここからは、公的年金の未支給年金が請求できる条件を解説します。
(注)企業年金や個人年金の場合は団体や加入会社などによって条件が変わります。以下の窓口で確認してください。
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2-1 未支給年金を請求できる人
未支給年金を請求できる人には、以下のようなふたつの条件があります。
①亡くなった受給権者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹とそれ以外の3親等内の親族であること。
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②死亡当時、亡くなった人と生計をともにしていたこと。生計をともにすることとは、下表の通りです。
1 |
住民票上、同一世帯に属している |
2 |
住民票上は世帯が異なるが、住所が住民票上同じである |
3 |
住所は住民票上異なるが、現に起居がともであり、消費生活上の家計をひとつにしていることが認められる |
参考:厚生労働省「紙上 Live 講義 生計同一に関する認定条件」
2-2 未支給年金をもらえないこともある?
請求権者の範囲ではなかったり、生計同一関係が認められなかったりすれば未支給年金を受けとることはできません。
2-3 未支給年金の請求は早い者勝ち?
未支給年金の請求は、早い者勝ちではありません。
未支給年金を受け取る遺族には、下表のように順位があり、先順位の高い人から優先されます。