死後事務委任契約とは|契約すべき人や手続き方法、費用まで詳しく解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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「おひとりさまが亡くなった後の手続きは、だれがやってくれるの?」
「身寄りがなく死後の手続きを頼める人がいないときは、どうすればいいの?」
などとお考えではないですか。
人が亡くなると、さまざまな手続きが必要となります。
死後の手続きを依頼できる人がいないと、自分の死後がどうなるのか不安になるでしょう。
しかし通常は親族が行う死後の事務手続きを、生前に死後事務委任契約として第三者に依頼できるのです。
この記事では、死後事務委任契約とは何かや契約すべき人、手続き方法、費用まで弁護士が詳しく解説します。
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ただいま鋭意準備中です。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
1 死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、亡くなった後にやるべき事務手続きを、信頼する第三者(人や法人)にまかせて実行してもらうための契約のことです。
2 死後事務委任契約のおもな内容
死後事務委任契約で委任する内容は、自由に決められます。
しかし、相続に関する内容を盛り込むことはできません。相続の問題は、遺言書を別途作成する必要があります。
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逆に、遺言書に死後事務委任契約の内容を盛り込んでも、強制力がないため実現されるかどうかはわかりません。死後事務の内容は、死後事務委任契約を結ぶ必要があるのです。
死後事務委任契約のおもな内容を紹介します。
- 死亡の連絡
- 遺体の引き取りや葬儀など
- 未払い費用の精算
- サービス契約の解約
- 行政への届け出
- 不動産売却や遺品整理
- デジタル遺品の整理
それぞれ説明していきましょう。
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2-1 親族や知人などに死亡の連絡をする
生前にリストアップしておいた親族や友人などに、死亡の連絡をします。
「死亡後すぐではなく、葬儀後に連絡してほしい」などの希望も可能です。またSNSを使った告知もできます。
2-2 遺体を引き取り葬儀や埋葬をする
病院などから遺体を引き取り、葬儀を行い火葬後に埋葬します。
しかし、葬儀や埋葬の仕方にもさまざまな希望があるでしょう。
死後事務委任契約では、葬儀の形態や埋葬の方法などをこまかく指定できます。
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2-3 公共料金や医療費など未払費用の清算
公共料金には死亡後も基本料金が発生しますので、未払費用の清算とともに解約手続きもします。
手続きが必要となるおもな公共料金は以下のとおりです。
- 電気
- ガス
- 水道 など
電気やガスは小売り自由化により、今はさまざまな供給会社がありますので、死後事務委任契約時にどこと契約しているかの確認が必要です。
また病院で亡くなった場合には、退院手続きや医療費の支払いも必要になります。
2-4 携帯電話や駐車場契約などのサービスを解約
解約が必要なおもなサービスは、以下のとおりです。
- 携帯電話
- 駐車場
- 新聞
- クレジットカード
- インターネット
未清算の料金が残っていれば、解約とともに支払いも必要になります。
利用中のサービスを、もれなく解約手続きしなければなりません。
2-5 死亡届や社会保険など行政への届け出提出
行政への届け出一式を依頼できます。
死亡後手続きが必要な届け出は、下表のとおりです。
届け出書類 |
提出先 |
詳 細 |
死亡届 |
市区町村役場 (死亡者の本籍地・死亡地 届出人の所在地) |
医師の死亡診断書(警察による死体検案書)を添付し提出 死亡を知った日から7日以内 (国外は3カ月以内) |
火葬許可申請書 |
市区町村役場 (死亡者の本籍地・死亡地 届出人の所在地) |
死亡届提出後に発行される火葬許可証を火葬場の管理事務所に提出し火葬 |
埋葬許可証 |
墓地・霊園の管理者 |
火葬済印が押された火葬許可証を使用 |
年金の受給停止届 受給権者死亡届(報告書) |
年金事務所・年金相談センター |
厚生年金・共済年金10日以内 国民年金14日以内 (日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば原則不要) |
介護保険の資格喪失届 65歳以上(第1号被保険者) 40‐64歳(介護保険の認定を受けた人) |
市区町村役場 |
死亡日から14日以内
|
国民健康保険の資格喪失届 (自営業者、農業者、無職の人など) |
市区町村役場 |
死亡日から14日以内 (死亡届の提出をすれば完了する市区町村あり) |
健康保険の資格喪失届 (会社員など) |
勤務先 |
手続きは勤務先の担当者が(5日以内)行うため、死亡後速やかに勤務先に連絡 |
後期高齢者医療保険の資格喪失届 (75歳(一定の障害認定の場合は65歳)以上が加入する医療保険制度) |
市区町村役場 |
死亡日から14日以内 (死亡届の提出をすれば完了する市区町村あり) |
提出が必要な届け出は個人の状況によって変わりますので、契約時にこまかく内容を確認する必要があります。
【関連記事】未支給年金は相続財産になる?年金の種類による違いを弁護士が解説
2-6 不動産の売却や遺品整理など家の片づけ
まず遺品整理など家の片づけを行い、持ち家の場合は売却し負債の支払いにあてたり遺贈寄付したりが可能です。
賃貸物件なら原状回復し、貸主に返却します。
【関連記事】遺品整理業者とのトラブルを避けよう!予防策からもめた場合の対処法まで解説
2-7 デジタル遺品の整理
デジタル遺品の整理とは、以下の2つです。
- 携帯電話やパソコンなどのデジタル機器内に保存されているデータを消去する
- Web上に保存されているデータは、アカウントとパスワードで削除や解約、利用中の有料サービスもすべて解約する
デジタル遺品を親族などに見られずに処分したい人もいるでしょう。
死後事務委任契約であれば、携帯電話やパソコンに残っているデータを削除し、誰にも見られずに処分できます。
3 死後事務委任契約を利用すべきなのはどんな人?
本人の遺志をくんで死後事務を引き受けてくれる家族などがいれば、死後事務委任契約は不要です。
ここでは死後事務委任契約を利用すべきなのはどんな人なのかを、解説します。
3-1 おひとりさま
生前1人で自分らしく生きてきた人も、死後事務を自分自身で行うことはできません。
おひとりさまで死後事務を頼める親族などがいない場合には、死後事務委任契約が必須です。
3-2 パートナーと内縁関係にある人
内縁関係のパートナーだと、法定相続人や親族ではないため死後事務がスムーズにいかない可能性があります。
親族や法定相続人に優先して手続きをされたり、相続権がないので葬儀費用など必要な費用を故人の遺産から出せません。
葬儀や埋葬のやり方などで故人の希望があっても、親族と意見が違えばトラブルになることも。
このようなトラブルを防ぐためにも、パートナーと内縁関係にある人は死後事務委任契約が必要です。相続のトラブルを防ぐためには、遺言書を残すことも重要になります。
3-3 葬儀や埋葬方法などに特別な希望がある人
日本では、大多数の人が火葬で埋葬されます。しかし、ごく少数ですが土葬の選択をする人もいるのです。
他にも、樹木葬や散骨などを希望する人も増えています。
しかし家族に依頼していても、望みどおりの方法で葬儀や埋葬してもらえないことも。
なぜなら家族の理解が得られるとは限らないからです。
葬儀や埋葬方法などに特別な希望がある人は、死後事務委任契約の利用をおすすめします。
3-4 親族に迷惑をかけたくない人
親族はいるけれど、遠方に住んでいたり疎遠だったりして迷惑をかけたくないと考える場合があります。
また近くにいるけれど折り合いが悪いため、死後事務を頼みたくないこともあるでしょう。
4 死後事務委任契約はどこに依頼すればよい?
死後事務委任契約は、専門家だけでなく友人や知人などの個人にも依頼できます。
しかし専門的な知識のある人(法人)に依頼するほうが、トラブルも少なく死後事務もスムーズに進むでしょう。
ここでは、代表的な3つの依頼先を紹介します。
4-1 弁護士や司法書士などの専門家
弁護士や司法書士などの専門家に、死後事務の手続きを依頼できます。
死後事務委任契約の内容があいまいだったり、重要な事項がもれていたりすると、死後事務の実行がスムーズに運ばないおそれも。
しかし弁護士や司法書士などの専門家に依頼すれば、専門知識をいかして明確で確実な契約内容が定められ、死後事務がトラブルなく円滑にすすみます。
4-2 社会福祉協議会
社会福祉協議会でも、死後事務委任契約の取り扱いをしているところがあります。
社会福祉協議会とは、都道府県や市町村に設置された福祉の向上などの社会福祉活動を推進する民間組織です。
契約するには年収や家族の状況などの条件や、頼みたい事務処理に制限がある場合も。
詳しい条件や契約内容については、お近くの社会福祉協議会やホームページで確認しましょう。
4-3 死後事務委任契約をあつかう事業者
死後事務委任契約を専門としてあつかう事業者へ、死後の手続きを依頼することもできます。
事業者では専門の担当者が相談に応じてくれるほか、死後事務の内容も基本的なものがパックになっていることも。
その反面、頼みたい内容が含まれていないと、複数の業者に依頼しなければなりません。
サービス内容から費用面まで、それぞれの業者により特徴があります。いくつかの業者から見積りをとり、比較検討することが大切です。
5 死後事務委任契約費用の支払い方法
死後事務委任契約費用の3つの支払い方法を、順に解説しましょう。
5-1 預託金を預けて支払う
依頼者が死亡すると、銀行預金は凍結され引き出しができなくなります。
また、相続人以外が勝手に遺産を持ち出すこともできません。
そのため、必要な金額を契約時に預託金として預ける方法です。
万一の解約時に預託金がきちんと返還されるかどうか、また安全に保管されているかなどを確認しておく必要があります。
5-2 遺産で清算する
遺言書で、遺産の一部を死後事務委任契約の受任者へ支払う旨の記載をして支払う方法です。
生前に支払いの必要はありませんが、遺産が少なければ資金不足で死後事務が実行できないリスクもあります。
5-3 生命保険の死亡保険金で支払う
依頼人がなくなったときの死亡保険金を、死後事務委任契約費用にあてる方法です。
月々の少ない保険料で契約できます。
6 死後事務委任契約の手続き方法の流れ
死後事務委任契約のおおまかな手続きの流れを紹介します。
6-1 依頼内容の相談
死後事務委任契約を依頼したい相手を誰にするか決めます。
死後の手続きについて不安なことや、依頼したい内容などを相談しましょう。
6-2 見積金額を確認
依頼内容をもとに見積書を作成。
依頼者は、内容と費用に問題がないか見積書を確認します。
6-3 公証役場で死後事務委任契約の公正証書作成
死後事務委任契約で公正証書を作成する理由は、第三者が死後事務を請け負っているという証明と身分証の代わりになるためです。
公正証書があることで、相続人や親族でない人が死後事務を行う際のトラブルをふせぎスムーズに実行できます。
死後事務委任契約は、どんな契約書でも成立しますが、公正証書は、ほかの契約書にはない高い証明力を備えているのです。
6-4 費用の支払い
それぞれの支払い方式により、費用を支払います。
7 死後事務委任契約のトラブル
死後事務をやってくれる親族などがいない場合に役立つ死後事務委任契約ですが、トラブルもあります。代表的なものを解説しましょう。
7-1 依頼した事業者の破綻
契約から時間がたつために経営状態が変わり、依頼した事業者が破綻することもあります。
事業者が破綻すれば、契約していた死後事務をやってもらえないだけではなく、預けていた預託金が戻ってこない可能性も。
7-2 預託金を使い込まれる
死後事務の実費や報酬を支払うための預託金を、受任者の業者などによって使い込まれることがあります。
葬儀の規模など契約内容によっては、数百万円の預託金を預けていることも。
預託金を預けるときには、業者の運営資金とは別に、弁護士や信託銀行などで安全に分別管理をしている業者を選ぶことが大切です。
7-3 支払い費用や契約内容で相続人ともめる
相続人ともめる理由の代表的な例は、以下のとおりです。
- 費用の支払いをしたくないので、相続人や親族で死後事務を行いたい。
遺産を少しでも多くもらいたいので、相続人から契約を解除したいとの申し出があることも。 - 希望の葬儀や埋葬の仕方が、契約者本人と相続人とで食い違っていた。
本人が海に散骨を希望していても、相続人はお墓に埋葬したいので遺骨を渡してもらえない。
当の契約者は亡くなっているため、死後事務の依頼内容を本人に確認できません。
トラブルを防ぐためには、契約内容を生前に相続人や親族に伝えて理解を得ておくことが大切です。
8 死後事務委任契約に関するよくある質問
死後事務委任契約に関するよくある質問を集めてみました。順に紹介します。
8-1 国や自治体が死後事務をサポートしてくれる?
亡くなった人の身寄りがまったくない場合も、国や自治体は死後事務をやってくれません。遺体を放置するわけにはいかないので、自治体が火葬して合同墓に埋葬するだけです。
自分の望む方法で埋葬できるわけではありません。
しかし、エンディングノートの配布などで終活を支援する自治体が増えてきています。
【関連記事】誰でもできる終活ノートの作り方!手順や留意点を弁護士がやさしく解説
支援内容は、各自治体によって変わりますので、弁護士へ相談したりお住まいの自治体でご確認ください。
8-2 死後事務委任契約の費用はどのくらいかかる?
かかる費用は、死後事務の内容や頼む相手によりまちまちです。
友人や知人に依頼する場合、無料でやってもらえることもありますが、葬儀代など実費の負担は必要です。
専門家や業者に依頼する場合は、報酬としておよそ50万円〜が目安となります。他に葬儀代や未払費用の清算など死後事務にかかる実費が必要です。
しかし死後事務委任契約の費用は、依頼する内容や相手により大きく変わります。
相見積をとったり十分に説明を聞いたりして、納得のうえで契約しましょう。
8-3 死後事務委任契約の公正証書は書式が決まっている?
死後事務委任契約の公正証書には、決まった書式はありません。
じつは死後事務委任契約は不要式行為(形式を要求しないもの)なので、特別な条件はなく口頭による合意でも成立するのです。
9 死後事務委任契約で死後の不安が解消|老後も安心して暮らせます
人が亡くなったときには、さまざまな死後事務が発生します。
死亡届の提出から、葬儀や埋葬、自宅の片付けや行政への届け出など、こまごまとした死後事務を数えるときりがありません。
生前に信頼できる人(法人)と死後事務委任契約を結んで、自分の希望どおりに死後事務をやってもらえることになれば、死後の不安は解消します。
死後の心配ごとがなくなれば、老後も安心してイキイキと暮らせるでしょう。
しかし死後事務を第三者が行うには専門性が高い内容も多く、スムーズに行うにはさまざまな注意点もあります。
そのため死後事務委任契約の手続きは、専門的な知識があり信頼できる弁護士などに相談することがおすすめです。
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