遺産相続トラブルの兄弟間における事例7選|予防や解決策も詳しく解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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「うちは仲のよい兄弟だから遺産相続トラブルなんてあり得ない」と、お考えではありませんか。
しかし、相続での兄弟間トラブルはいつおこっても不思議ではありません。
それまで仲のよかった兄弟が、相続が起きたとたん、険悪になり仲たがいをしてしまうこともよくあることです。
この記事では、遺産相続で兄弟間におけるトラブル事例を詳しく紹介します。防止法や解決策も解説しますので、トラブルのない相続手続きの参考にしてください。
1 遺産相続トラブルで兄弟間における事例7選
遺産相続で兄弟間のトラブル事例には、おもに以下の7つがあります。
- 絶縁している兄弟がいるとき
- 跡取りの長男から相続放棄を求められるとき
- 兄弟の配偶者が関与してくるとき
- 相続財産が不動産のとき
- 遺言書の内容が不公平なとき
- 被相続人の財産を勝手に使い込んだ兄弟がいるとき
- 寄与分を主張する兄弟がいるとき
トラブル事例と、それぞれの防止法と解決策を順に解説しましょう。
1-1 絶縁している兄弟がいるとき
絶縁している兄弟がいる場合には、遺産相続がスムーズにいかずトラブルになりがちです。
遺産を相続するための遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要となります。
絶縁している兄弟をのぞいて遺産分割を決めることはできないため、トラブルになるのです。
<防止法>
自分以外の兄弟や親族、友人などが、絶縁している兄弟の連絡先を知っている人がいれば連絡を頼みましょう。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議の内容に同意する必要があるので、必ず連絡をとらなければなりません。
<解決策>
手を尽くして探しても絶縁している兄弟が見つからないときには、不在者財産管理人の選任申し立て手続きをしたり、生死不明で失踪宣告を行ったりして相続手続きを進められます。
【関連記事】相続人が行方不明で連絡取れない!相続が進まないときの対処法とは?
【関連記事】失踪宣告とは?行方不明者の相続・相続人が失踪者|必要手続きを解説
しかし専門的な知識や煩雑な手続きが必要なため、弁護士に相談するのがおすすめです。
1-2 跡取りの長男から相続放棄を求められるとき
親と同居して面倒を見ていた跡取りの長男から、財産は自分がもらうからと相続放棄を求められることもあります。
家督制度があった時代とは違い、現代は兄弟が平等に遺産を相続できます。しかし、地方によっては、まだまだ家督制度の名残があり長男や長女に遺産を多く相続させることも。他の兄弟は納得できず、トラブルが起きます。
<防止法>
相続は相続人の権利であり、他の兄弟に相続放棄を強要されるものではありません。
相続放棄をしてしまったら後で悔やんでも簡単には撤回できません。すぐに答えず、十分に検討して決めましょう。
<解決策>
強要されても、納得できなければ相続放棄をしてはいけません。しかし強要されて相続放棄をしてしまった場合には、取消が認められる場合もあります。
相続放棄の取消には、家庭裁判所に取消の申述をおこなうことです。
専門的な知識が必要なため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
1-3 兄弟の配偶者が関与してくるとき
兄弟の配偶者には、相続権はありません。しかし、自分の配偶者が損をしないように口出ししてくる配偶者がいると、トラブルになります。親族間には、配偶者にはわからないさまざまな事情があるものです。
配偶者は、相続権がないのに親族の事情を理解できず、損得だけで口出しをしてくるのでトラブルになります。
<防止法>
原則として、相続人でない配偶者は遺産分割協議の場に参加できません。遺産分割協議の内容に口出しできないのです。
そのため遺産分割協議には、相続人の配偶者を参加させないようにしましょう。
(注)配偶者も被相続人の介護を担った場合などには、特別寄与料の請求ができます。 |
<解決策>
遺産分割協議に兄弟の配偶者が大きく関与し、遺産分割協議が円滑に進まなくなった場合には、裁判所に遺産分割調停の申し立てができます。
遺産分割調停では、中立な立場で当事者の言い分を平等に聞き取り、具体的な解決策を提案して円満に解決できるようにしてくれるのです。
【関連記事】遺産分割調停に必要な費用とは?相場・手続き方法を解説
1-4 相続財産が不動産のとき
相続財産の多くが不動産のときは、トラブルが起きやすいでしょう。
不動産は容易にわけにくく、誰か1人だけが家や土地を相続することになれば他の兄弟は不公平を感じトラブルになるのです。
<防止法>
被相続人が生前に遺言書を残し、不動産を相続できない兄弟へ配慮することでトラブルを防止できます。
【関連記事】遺言書の書き方~自筆で書く自筆証書遺言のポイントと注意点を弁護士が解説
大きな土地であれば兄弟にわけて相続させたり、誰も欲しがらないような不便な土地であれば早めに処分したりしておくなどの対策もできるでしょう。
遺産が不動産ばかりで現金がなければ生命保険に加入し、不動産を相続できない兄弟を生命保険金の受取人にすることで平等に相続させられます。
<解決策>
不動産を相続するには、以下の3つの方法があります。
- 不動産を兄弟の共有名義にする
- 不動産をひとりが相続し、他の兄弟に代償金を支払う
- 不動産を売却し、現金化して分割する
1の不動産を共有名義にしてしまうと、売却のときなどに相続人全員の同意が必要なデメリットがあります。
また子や孫の代にまで相続されると名義人が増え、ますます面倒な手続きが必要になるので、あまりよい方法とは言えません。
【関連記事】共有物分割訴訟とは?不動産の共有状態による問題を解決するには
トラブルを防ぐには2か3の方法がおすすめです。
1-5 遺言書の内容が不公平なとき
被相続人の遺言書が「遺産のすべてを長男に相続させる」などと不公平な場合には、トラブルとなります。
親の遺産を長男だけが相続することは、他の兄弟は納得できないでしょう。
<防止法>
被相続人の生前に、家族で相続について話し合い、兄弟が納得できる相続方法を決めておくことが大切です。
子どものほうからは言い出しにくいので、できれば親から皆が納得できる相続についての考えを、子どもたち全員に伝えておくとよいでしょう。
その上で遺言書を残しておけば、相続争いにはなりません。
もっとも、遺言を書いたことを伝えることで、生前からトラブルになる可能性もあるため、慎重に進め方・伝え方を決める必要があります。
<解決策>
「長男にすべての遺産を相続させる」と遺言書に記載されていても、他の兄弟は遺留分を請求できます。
(注)遺留分とは、最低限保障されている相続分です。親の遺産を子である兄弟が相続するときは認められますが、兄弟の遺産を他の兄弟が相続するときには認められません。 |
【関連記事】遺留分侵害額請求の調停とは?手続きの流れやポイントについて弁護士が解説
1-6 被相続人の財産を勝手に使い込んだ兄弟がいるとき
被相続人と同居していた兄弟が、預金を勝手に引き出して自分のために使っていたことが発覚することもあります。これは、被相続人の死亡後に思ったより遺産が少ないことで発覚することが多いものです。
いくら同居して被相続人の世話をしてもらっていたとしても、勝手に使われたことを許せずトラブルになります。
<防止法>
被相続人の死亡後に、銀行口座からの使い込みが発覚した場合、取引先の銀行などに被相続人の死亡を伝えて口座を凍結してもらいます。口座を凍結することでこれ以上の引き出しを防止できるのです。
逆に被相続人の財産を管理する人は、被相続人のために使った領収書をとっておいたり明細を細かく記録したりすることなどで、使い込みを疑われないようにしておきましょう。
<解決策>
相続時に兄弟間で話し合っても解決できないときは、遺産分割調停を行えます。それでも解決しなければ、地方裁判所に申し立てを行い、使い込んだ兄弟に損害賠償請求や不当利得返還請求が可能です。
1-7 寄与分を主張する兄弟がいるとき
兄弟のひとりが、被相続人の介護などを無償で引き受けていたと寄与分を主張してトラブルになることがあります。
他の兄弟からすると、寄与分が認められれば自分の相続分が減るので、簡単に認めることはできません。
【関連記事】寄与分の計算方法とは?相続手続きで知っておきたい具体例
【関連記事】介護をした人が相続で受け取れる「寄与分」とは?条件や種類を詳しく解説
<防止法>
誰が見ても明らかな寄与分に関する証拠資料を集めておくことが、大切です。
証拠資料は、介護の場合なら、診断書やカルテ、要介護認定書類などがあります。それ以外にも、介護日記をつけておくこともどのくらい介護に時間と労力を要したかがわかる証拠資料となるでしょう。
<解決策>
他の兄弟と話し合うことで寄与分を認めてもらえればよいですが、そこで認められなければ調停や審判に進むことになります。
証拠資料の集め方や調停、審判への進み方は、弁護士など専門家への相談がおすすめです。
【関連記事】遺産分割調停の流れ~メリット・デメリットや答弁書の書き方について弁護士が解説
2 兄弟で相続争いの末路とは?
兄弟間で相続争いの末路は、仲のよかった兄弟が絶縁して付き合いをなくすことです。
相続争いをしていると、相続とは関係のない長年の恨みつらみが出てきたり、他人でないために遠慮なく主張してしまったり、相続が完了した後もわだかまりが残ってしまいます。
誰の人生にも、よいこともあれば悪いこともあるものです。
困ったときに助け合ったり嬉しいときにはともに喜んだりできる兄弟を、相続争いのために失くすのは、本当に残念なことといえるでしょう。
3 兄弟の遺産相続トラブルで泣き寝入りしないために|早めに弁護士へ相談を
兄弟の遺産相続トラブルには、さまざまなものがあります。
長男から遺産放棄を強要されて仕方なく応じてしまったり、遺言書の内容が不公平で納得できなかったり、介護したのに寄与分が認められなかったり……。
しかしもめ事は嫌だったり、どうしてよいかわからなかったりして、いわれるがまま泣き寝入りしてしまうこともあるでしょう。
そんなときには、経験豊富で専門知識のある弁護士へ早めに相談されることをおすすめします。
できるだけ早めに対策を講じることで、トラブルなく円滑な遺産相続ができるでしょう。
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
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