相続放棄と車の処分|適切な処分方法と注意点を解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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相続放棄をしたいけれど、車はどうすればよいのだろう。
相続放棄を検討する際によくあるお悩みです。
亡くなった人が所有していた車は自由に処分ができません。そのままにしていると駐車料金など管理にお金がかかってしまいます。
故人の車をうかつに処分すると単純承認と判断されて、相続放棄が無効になるかもしれません。そのため、相続放棄をする場合、故人の車をどのようにすればよいか困っている方は多いです。
今回は、相続放棄する方がどのように故人の自動車を扱えばよいかを相続に詳しい弁護士が解説します。
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1 相続放棄をしたら故人の車は処分できないのが原則
相続放棄は故人の負債も含めて財産を一切相続しないことです。
車は、相続財産の対象になるため、相続放棄をした人は当然車も相続できません。つまり、勝手に処分等を行うこともできません。
基本的には、相続を受けた人のみが車の所有者となり、管理や廃車の手続きを行います。
もし、相続放棄をした人が勝手に故人の車を処分すると、単純承認(相続したもの)とみなされて相続放棄が無効とされ、財産管理責任を負う可能性があります。
1-1 相続人全員が相続放棄をした場合
相続人全員が相続放棄を選択した場合は、誰も故人の車を処分できません。
この場合は、裁判所で相続財産清算人(旧 相続財産管理人)を選任してもらい、相続財産になる車を処分してもらいます。
ただし、裁判所で相続財産清算人を選任してもらうには、数十万円〜100万円前後の予納金が必要です。そのため、実際には相続財産管理人選任を裁判所に請求するケースは稀です。相続財産管理人をたてる場合は、相続人候補のなかで費用をどのようにするか取り決めておく必要があります。
【関連記事】相続財産清算人(旧 相続財産管理人)の選任にはいくら必要?費用の内訳や節約方法を解説!
相続財産管理人選任の手続きを行わずに故人の車を勝手に処分したり売却したりした場合は、単純承認となる可能性があります。
2 相続放棄する場合の自動車処分について
実は、相続放棄をしても、車が相続対象にならず処分してもよいケースもあります。ここからは、ケース別に相続放棄後の車の処分方法についてみていきます。
2-1 車にローンがある場合
ディーラーローンを組んで購入されていた場合は、所有者であるディーラーに車を引き渡します。車を引き渡した後の手続きはありません。
ディーラーローンで購入した車は、使用者が故人であったとしても、ほとんどの場合で所有権はディーラーにあります。そのため、ディーラーローンを組んで購入された車は相続対象にはなりません。
銀行などでマイカーローンを組んでいた場合、所有者は故人のため、車は相続の対象になります。そのため、所有者が故人であったと確認できた場合は車を勝手に処分はできません。ローンが残っている場合は、ローン会社などへ速やかに連絡しましょう。
2-2 ローン残債がなく車の所有者が故人の場合
車にローン返済がなく所有者が故人の場合は、車に資産価値があるかどうかで処分できるかどうかが決まります。
①車に資産価値がない場合は処分可
車に資産価値がない場合は、廃車等の処分を行ったとしても、財産の処分とはなりません。
一般的には、新車登録してから5年以上経過した車は資産価値がないとみなされるケースが多いです。これは、基本的には自動車の減価償却は5年であるという考えから判断されます。また、実際に査定をしてみて価格がつかない車も資産価値はありません。
ただし、後述しますが自動車税の未納・滞納がある場合は相続人が支払いを行っておく必要があります。
②資産価値がある場合は勝手に処分不可
資産価値がある車の場合は、廃車等で勝手に処分をしてしまうと財産を処分したとみなされ、単純承認になる可能性があります。
しかし、処分せずにそのままにしておくと駐車料金や税金など費用もかかってくるでしょう。とくに、自動車税に関しては廃車手続きをしない限りは、所有者が亡くなっても毎年4月に納付通知が届きます。故人の預貯金から税金の支払いを行うと単純承認とみなされる可能性があるため、自分で支払う必要があります。
また、管理責任義務違反に該当するかもしれません。これは、民法で定められている「自己の財産と同一の注意を持ってその財産を管理しなければならない」というものです。
つまり、車を放置して資産価値を下げた場合にはその損害賠償を支払わなければならない可能性があるのです。これらの問題を回避するためには、車を売却して現金にしておく方法があります。車を現金化することは、車を適切に保管しているのと同義に扱われ、勝手に処分したとみなされる可能性は低いでしょう。
3 相続放棄を決めたらすべきこと
相続放棄を決断したら、家庭裁判所に相続放棄の申立を行う前に、故人の車について2点確認を行いましょう。
3-1 車の所有者を確認する
まず、車の所有者を確認しましょう。
上述したように、ディーラーローンで購入した車であれば、車の所有権はディーラーがもっています。また、故人ではなく配偶者が所有者になっているケースもあります。車検証の「所有者の氏名又は名称」で確認可能です。車の所有者が故人でなければ、当然相続の対象にはならないので、所有者に連絡をして車を引き渡します。
車検証見本(出典:国土交通省)
3-2 車の資産価値を把握する
上述したように車に資産価値があるかどうかで、今後の流れが変わってきます。
そのため、中古車買取業者や自動車査定協会などで車を査定してもらい、資産価値を把握しておく必要があります。資産価値がない場合は、査定書など価値がないものと証明できる書面を受け取っておきましょう。
自動車査定協会のホームページ:http://www.jaai.or.jp/
明らかに価値がない場合には問題が少ないですが、価値がつくか迷うような場合には、複数社から査定を受けましょう。
4 相続放棄をする際の注意点
相続放棄をする場合、故人の車に関していくつか注意点があります。とくに、単純承認と判断されるような行動を避けなければいけません。
4-1 軽自動車やバイクも相続対象になる
所有者が故人の場合、相続対象になるのは普通自動車だけでなく軽自動車やバイクも該当します。
軽自動車については名義変更を行えば廃車可能ですが、名義変更の時点で単純承認とみなされる可能性があります。軽自動車やバイクも普通自動車同様で、勝手に処分を行うと単純承認に該当する可能性があるので注意しましょう。
4-2 自動車税の滞納や未納は自己負担で支払う必要がある
故人の車を処分するためには、自動車税を確実に納めておく必要があります。故人に自動車税の未納や滞納がある場合は、相続人が自己負担で支払わなければなりません。もし、相続財産の中から未納もしくは滞納した自動車税を支払った場合は単純承認とみなされる可能性があります。
4-3 故人の車は乗らない
相続放棄の意思がある場合は、故人の車には乗らないようにしましょう。相続放棄の申立を行ったにもかかわらず、車に乗ることは放棄意思とは矛盾するため、単純承認とみなされる可能性があります。また、交通事故を起こしてしまうリスクもあります。
4-4 自動車保険の解約について
自動車保険の契約者が亡くなってしまったので、解約を行う必要があります。自動車保険の解約は、相続人が契約者変更を行い、解約意思を申し出ることで解約が可能です。
しかし、相続放棄をするにもかかわらずこの手続きを勝手に行ってしまうと、単純承認とみなされる可能性があります。
5 まとめ:相続放棄をする場合、勝手に自動車を処分してはいけません
相続放棄を行うと、故人が所有者であった車を自由に処分できません。勝手に処分するなど、自己判断で誤った手続きを行うと単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるかもしれません。相続放棄をした後の車の処分は非常に難しいのです。
判断に迷った際は、弁護士など相続に関する専門家に相談しながら進めましょう。
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