相続放棄と賃貸物件|解約や滞納家賃支払いなどの疑問に答えます

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相続放棄と賃貸物件|解約や滞納家賃支払いなどの疑問に答えます

賃貸アパートやマンションに住んでいた身内が亡くなった時に困るのは、「賃貸物件をどうしたらよいか」ということではないでしょうか。

特に相続放棄するつもりである場合は、「賃貸物件の解約はできるのだろうか」「遺品の整理はしなくていい?」「連帯保証人も相続放棄できるの?」など、疑問が尽きないでしょう。

相続放棄を前提にしているのなら、賃貸物件の解約や家賃の支払いなどすぐに対応せず慎重になるのが賢明です。

本記事では、相続放棄の意味を説明するとともに、相続放棄する際に覚えておきたい賃貸物件の扱い方や、相続放棄をした連帯保証人が滞納家賃を支払う義務の有無などについて解説します。

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1 相続放棄について

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相続放棄とは、法定相続人(遺産を相続する人)に与えられた、遺産の相続を放棄する権利です。

法定相続人になると、被相続人(故人)の財産と負債の両方を相続する権利が発生します。と同時に、法定相続人には相続を拒否する権利も生じます。つまり、法定相続人は、相続放棄するかしないかの決断を自由に決めることが可能です。

相続放棄をすることで法定相続人は、財産と負債の両方を相続する必要がなくなります。

2 相続放棄すると決める際の留意点

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相続放棄すると決めた場合は、以下の点に留意しましょう。

・相続放棄できる期間が決められている

・相続放棄しても相続財産の管理義務は残る

・遺品は勝手に処分しない

2-1 相続放棄できる期間は決められている

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相続放棄は、故人が最後に住んでいた住所を管轄している家庭裁判所で手続きをします。

相続放棄の申述ができるのは、故人が亡くなったことを知った日(基本的には故人が亡くなった日)から3か月以内。この期間を「熟慮期間」といいますが、熟慮期間を過ぎてしまうと原則として相続放棄はできなくなりますので、注意が必要です。

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2-2 相続放棄しても管理義務は残る

民法は、法定相続人に対して「相続財産の管理」を義務付けています(同法940条1項)。

つまり、相続放棄をしても、財産を管理する義務は法定相続人に残るということです。この義務は、次の法定相続人が決まるまで続きます。

管理が必要な財産がない場合は、管理義務について問題にならないかもしれません。けれども、不動産のように管理が必要な財産がある場合は、管理義務を考慮したうえで相続放棄するかどうかを判断するとよいでしょう。

賃貸物件は、財産管理の対象です。例えば、賃貸物件に住んでいたAさんが亡くなりAさんの子供(Bさん)が相続放棄した場合、Bさんは次の法定相続人(Aさんの両親やAさんの兄弟姉妹など)が決まるまで、Aさんの遺産を管理します。もしその間に、Aさんが住んでいた賃貸物件に損害を与えてしまった場合は、Bさんに責任が生じるでしょう。

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2-3 遺品は勝手に処分しない

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相続放棄すると決めたら、遺品は勝手に処分するのはやめましょう

時計や不動産など被相続人の遺産の中で価値あるものを勝手に処分した場合、「単純承認(故人の遺産を相続すること)」と判断される可能性があります。どういう意味かといいますと、「遺品に手を付けるということは、相続する意思がある」とみなされて、相続放棄できなくなるということです。

価値のないものであれば処分しても問題ないといわれていますが、単純承認に該当するかどうかは、判断する人によって違いがあります。相続放棄を決めたら、故人が住んでいたアパートの遺品はかまわないのが賢明です。

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3 相続放棄における賃貸物件に対する疑問と対処法

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相続放棄をする場合、故人が住んでいた賃貸物件はどうしたらいいのでしょうか。

よくある疑問を取り上げて説明します。

3-1 疑問①:相続放棄をする場合賃貸物件の解約は可能?

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相続放棄をする場合、自ら賃貸物件の解約はしないのが賢明でしょう。

被相続人には、「賃借権」というものがあり、遺産の一部になりうるからです。賃貸物件を解約するということは賃借権を処分したことになり、単純承認とみなされる可能性があります。

住んでいた人が亡くなっても契約が終わるわけではないので、そのままにすると家賃が発生します。けれども、相続放棄を決めた場合は、解約を求められてもすぐに応じるのは避けたいところです。

家賃を滞納したため、大家から一方的に解約してもらうなど、単純承認を極力避ける方法を選択するのが得策と言えます。

3-2 疑問②:滞納家賃を支払うのは自分?

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滞納家賃の支払いについても、相続放棄をする場合は慎重になりましょう。

「滞納家賃を支払う」という行為が単純承認と判断される可能性があるからです。例えば、滞納家賃を故人の貯金から支払った場合は、「相続財産を処分した」ということですので、単純承認とみなされます。

また、自分のお金から滞納家賃を支払うことも「100%単純承認ではない」と言い切ることが難しいことがあるため、注意が必要です。

相続放棄をする場合は、被相続人の滞納家賃を支払う義務はありません。滞納家賃の支払いには、安易に応じないのが賢明でしょう。

3-3 疑問③:賃貸物件の連帯保証人になっている場合は、滞納家賃を支払う必要がある?

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連帯保証人になっている法定相続人には、滞納家賃を支払う義務があります。

相続放棄と、連帯保証人としての義務は別です。大家さんに滞納家賃の支払いを求められたら、支払いに応じましょう。

3-4 疑問④:賃貸物件に住み続けることはできる?

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例えば故人と一緒に賃貸マンションに同居していた場合(名義は故人)、相続放棄をして同じマンションに住み続けることはできるのでしょうか。

答えは、「NO」です。賃貸の名義が故人の場合は、退去しなくてはなりません。「住み続けるということは、賃借権を相続することになる」と考えられるからです。

相続放棄をしてその賃貸物件に住み続けることを望んでいるのなら、借り主として新たに契約しましょう。

ただし、故人が家賃を滞納していたなどの課題がある場合は、慎重に行動することが望まれます。

3-5 疑問⑤:税金や公共料金の支払いはどうしたらいい?

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法定相続人は、原則として未払いの税金や公共料金を支払う必要はありません。

税金や公共料金の支払義務は被相続人にあるからです。よって、相続放棄をする場合は、故人に課せられた税金や未払いの公共料金を支払う必要はありませんし、公共料金の解約も可能です。

4 予想される賃貸物件に関するトラブル

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「相続放棄するのだから支払義務はない」と法的に言い切れたとしても、実際にトラブルに巻き込まれるケースがあります。

主なトラブルについて見てみましょう。

4-1 トラブル①:大家から遺品の整理や撤去を求められる

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相続放棄するのであれば遺品には手を付けないのが無難ですが、大家さんから遺品の整理や撤去を強く求められた場合は、慌てて行動しがちです。

相続放棄において、「遺品の整理」と「遺品の撤去」という行為には大きな差があります。

「遺品の整理」ですが、この行為については単純承認になるかどうかでは意見が分かれます。普通に遺品の整理をする分(例えば、形見の品を持ち帰るなど)には、単純承認に該当しないという見方が一般的です。ただし、金目の物だけを持ち出して換金するといった行為は、単純承認にあたります。

「遺品の撤去」は、遺品の整理よりも単純承認に該当する可能性が高まります。そのため、撤去には応じないのが一番です。遺品の整理や撤去を求められたら大家さんに事情を説明し、後順位の相続人に連絡を取り対応してもらいましょう。

4-2 トラブル②:熟慮期間を過ぎてしまった

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「故人の財産や負債の把握ができない」

「相続放棄した方がいいのかどうか決断できない」

「周囲から相続放棄しないよう言われている」

という場合は、相続放棄の手続きに踏み切るまでに時間を要するでしょう。そうすると、熟慮期間内に手続きを済ませることが難しくなってきます。

その場合は、熟慮期間の伸長を検討しましょう。熟慮期間の伸長は、家庭裁判所に上申書を提出し(伸長の申請は、熟慮期間内にすることが必須)、結果を待ちます。

4-3 トラブル③:相続財産清算人を選任する費用の捻出が難しい

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法定相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産清算人(旧 相続財産管理人)を選出します。

その際問題となるのが、「予納金」と呼ばれる費用です。予納金は、相続財産清算人に支払う報酬のことで、その相場は50~100万円程度といわれています。

相続財産清算人は、相続放棄した法定相続人に代わって財産を管理したり、必要に応じて債務の支払いをしたりします。相続財産清算人の報酬は、故人の財産から支払われるのが原則ですが、選任の手続きをする時点で支払う必要があり、法定相続人は予納金としてそれを納めます。

相続財産清算人は絶対に必要というわけではなく、管理が必要な財産がない場合は、無理に選任する必要はありません。賃貸物件は財産管理が必要となるため、相続放棄をしたら相続財産清算人を選任する可能性が高くなるでしょう

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5 相続放棄がこじれる場合は弁護士に相談しよう

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賃貸物件のある相続は、何かと複雑になりがちです。自力で解決することが難しい場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

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弁護士に相談することで、例えば以下の問題が解決されると考えられます。

5-1 相続放棄がベストな選択なのかどうか決めかねる時

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相続放棄という選択に迷いが出ることは珍しくありません。

・最初は相続放棄一択で考えていたが、遺産の状況を把握していくうちに迷いが出てきた

・故人にどのくらいの財産/負債があるのか分からない

・相続人によって相続放棄する・しないに分かれて足並みがそろわない

という場合は、相続放棄すべきかどうか決めることが難しいのではないでしょうか。

相続放棄すべきかどうかの相談は、弁護士が適任でしょう。

弁護士は、相続放棄を選択した場合どうなるかについて分かりやすく説明し、専門家の視点から、相続放棄すべきかどうかアドバイスしてくれます。

5-2 賃貸物件や遺品を処分してよいかどうか判断に迷った時

賃貸物件に住んでいた故人の遺産を相続放棄する場合は、何かと問題が複雑になりがちです。例えば賃貸物件の解約ですが、

・解約したのは、家賃がかさむのを防ぐ行為(保存行為)なので、単純承認にはあたらない

・解約したのは、処分行為にほかならない。よって単純承認である

というふうに、見解の違いで180度異なる結果が出ます。遺品の扱い方についても同じことが言えるでしょう。

そうした時に頼りになるのが、相続問題に詳しい弁護士です。弁護士は状況を把握し、法律と照らし合わせたうえで依頼人にどうすべきかアドバイスをします。

また、相続放棄に関する些細な疑問にも気軽に相談できますし、必要に応じて書類作成や手続きの代行を任せられるため、安心感が高まるでしょう。

5-3 熟慮期間が過ぎてしまった時

原則として、熟慮期間が過ぎてしまうと、相続放棄できなくなります。

けれども、例えば

・亡くなっていたことを全く知らなかった

・熟慮期間中に財産の内容を把握することが難しい

というふうに、3か月以内に手続きをするのが困難な場合は、期間の伸長が認められることがあります。

弁護士に相談することで、依頼主は熟慮期間の伸長に必要な書類の作成と手続きを代行してもらえます。

5-4 財産管理について解釈に迷った場合

「民法等の一部を改正する法律」が成立したことにより民法940条1項の法改正が行われ、令和5年4月1日より施行されました。改正後の条項は以下のとおりです。

“相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。引用:e-GOV 法令検索

結論から言いますと、相続放棄した相続人が負う義務の期間が明確になった以外は、それほど大きな変更はありません。

ただし、「財産の保存義務」については解釈が分かれるなど、あいまいな点もあります。相続問題に詳しい弁護士であれば、これまでの取扱事例や専門知識などから適切な解釈を提示してくれるでしょう。さらに、ケースと法律を照らし合わせて、どのような制度を用いて解決できるかといった提案も期待できます。

6 まとめ

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相続放棄をする場合における、賃貸物件の扱い方について説明しました。

相続放棄をする相続人が気をつけるのは、単純承認にあたらないようにすることです。

そのためには、

・賃貸物件は安易に解約しない

・遺品には安易に手をつけない

・原則として滞納家賃の支払いはしない(連帯保証人になっている場合は除く)

ということを念頭に対応します。

また、熟慮期間内に相続放棄の手続を済ませることも、忘れないようにしましょう。

もし相続放棄が難しいと感じられる場合は、早めに相続問題に詳しい弁護士に相談するのが賢明です。

弁護士からは、

・相続放棄がベストな選択かどうか判断する際のアドバイス

・相続財産管理人が必要かどうか判断する際のアドバイス

・賃貸物件について適切なアドバイス

・熟慮期間の伸長手続きを代行

といったサポートが期待できます。

専門家の知識やアドバイスを参考にしながら、賃貸物件の解約や滞納家賃などの問題を解決し、無事に相続放棄を済ませましょう。

相続放棄でお悩みがあれば弁護士へお気軽に相談しましょう。

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