相続放棄をしても生命保険を受け取れる?保険金を受け取れない場合や税金の問題まで解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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亡くなった方が借金を抱えていた場合、相続放棄をしたいが、その場合、生命保険金は受け取れるのかを知りたい方は少なくないと思われます。
生命保険金を受け取ってしまったがゆえに、それ以上の負債を背負ってしまっては大変なことです。
本記事では、相続に詳しい弁護士が、相続放棄と生命保険金の関係を解説します。また、相続放棄によって受け取れる財産や税金の問題についても合わせて解説していきます。
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1 相続放棄とは?
1-1 相続放棄
相続放棄とは、被相続人に属する一切の財産について相続権を放棄する行為をいいます。
遺産相続では配偶者や一定の親族が財産を受け継げますが、相続放棄を選ぶことで財産を受け取らずに放棄することもできます。相続放棄により、相続人は負債や税金などの責任や負担を回避することができます。相続財産にマイナスの財産が多い場合、相続放棄を選ぶケースが一般的です。
相続放棄は他の相続人の同意は必要がなく、相続人がそれぞれ自分の意思で行うことができます。
1-2 相続放棄の手続き
相続放棄は、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
裁判所への申立てにあたっては、戸籍等の必要書類を取得し、裁判所へ提出する書類を作成する必要があります。被相続人が養子縁組を組んでいたり、代襲相続等の事情がある場合には、戸籍類の取得がやや複雑になります。
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相続放棄は、本人が自ら手続きを行う、または、弁護士や司法書士などの専門家の助力を得る方法で行います。弁護士は、司法書士にはない「代理権」を有しており、被相続人の代わりに相続放棄手続きを全て行うことができます。
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2 一般的に相続放棄するケース
相続放棄を行うかどうかは、相続人の方それぞれの状況や関係に応じて決定することになります。通常は以下のような理由から相続放棄が選ばれることが多いです。
- マイナス財産が多い場合
- 他の相続人との遺産分割トラブルを避けたい場合
- 相続をしなくても生活に困らない場
相続放棄によって、マイナスの財産を相続しなくて済むだけでなく、親族間の揉め事に巻き込まれるリスクを回避し、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
遺産相続の精神的なストレスから解放されることを目的として相続放棄を行う方も少なくありません。
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3 相続放棄をした人は生命保険金を受け取れるのか?
生命保険金は相続財産ではなく、受取人固有の財産です。そのため、相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができます。
ただし、一部の条件や条項によって受け取れない場合もあります。
以下で受け取れる場合と、受け取れない場合を詳しく説明します。
3-1 生命保険金を受け取れる場合
相続放棄をしても生命保険の受取人が指定されている場合、保険金は受け取ることができます。生命保険は亡くなった方(被相続人)の財産ではなく、受取人の固有財産とみなされるためです。
つまり、相続放棄をしても受取人によって保険金が受け取られるため、相続放棄の影響は及びません。全額受け取ることができます。
また、生命保険金を受け取ったからといって、亡くなった方に借金があっても支払い義務はありません。
3-2 生命保険金を受け取れない場合
生命保険の受取人が亡くなった本人に指定されている場合、その生命保険は亡くなった方の財産とみなされます。
このため、相続放棄をすると保険金の受け取りはできません。
要するに、受取人が亡くなった本人である場合に相続放棄をすると保険金は受け取れません。
3-3 保険約款によって決まる場合
生命保険契約において、死亡保険金の受取人が明示されていない場合、保険約款を確認する必要があります。
保険約款に「死亡保険金の受取人を相続人とする」という明確な規定がある場合、相続放棄をしても相続人は死亡保険金を受け取ることができます。
契約内容や保険会社によって異なる可能性があるため、詳細な情報を確認することが重要です。もっとも、約款は詳細・大部になることが多いため、分からない場合には、電話で生命保険会社へ問い合わせると良いです。
(出典:日本生命ホームページ)
4 相続放棄時に受け取る生命保険金にかかる税金
相続放棄時に受け取る生命保険金には、相続税の非課税枠を利用できるケースと、利用できないケースがあります。
4-1 相続税
相続放棄時に生命保険金を受け取る場合、その金額が相続税の対象となる可能性があります。この場合、生命保険金は「みなし相続財産」として扱われます。
「みなし相続財産」とは、相続税法において一定の財産を特定の方法で評価し、相続財産とみなす制度です。
4-2 相続税の非課税枠を利用できるケース
「相続税の対象となる生命保険金には、非課税枠と呼ばれる範囲があります。相続人が死亡保険金を受け取る場合、非課税枠を利用することができます。
生命保険金の非課税枠の計算方法は、500万円を法定相続人の数で乗じることです。
500万円×法定相続人の数=死亡保険金の非課税枠 法定相続人が1人の場合は500万円、2人なら1,000万円となります。
ただし、この非課税枠は相続人の権利として設けられており、相続放棄をすると適用されません。相続放棄を行った場合、生命保険金は相続税の対象となる可能性があります。
5 生命保険金を受け取った後でも相続放棄は可能か?
生命保険契約で、「受取人」が「相続人」に指定されている場合だと、死亡保険金は相続財産にはいらないので相続放棄できます。
生命保険契約で、「受取人」が「被相続人」に指定されている場合だと、死亡保険金は相続財産になるので相続放棄できなくなります。
6 生命保険金以外で相続放棄しても受け取れる財産
生命保険金ではありせんが、相続放棄をした場合でも、以下のような財産を受け取ることができる場合があります。
6-1 死亡退職金
死亡退職金の受取人は、公務員と一般企業の社員で分けて考えます。
①民間企業の退職金
相続放棄をしていても、退職金を受け取ることができる場合があります。ただし、就業規則や退職金支給規則などの規定に従って決定されます。
②公務員の場合
国家公務員退職手当法や条例によって定められている死亡退職金は、相続財産ではなく、受取人の固有の財産として認められているので、受け取ることができます。
6-2 遺族年金・死亡一時金
遺族年金や共済年金、死亡一時金は、受給権者が法律で定められており、相続財産には含まれません。
そのため、相続放棄をしても遺族はこれらの支給を受けることができます。また、「国家公務員等共済組合法による共済年金」、「国民年金の遺族共済年金」も受給資格があります。
6-3 健康保険組合等からの葬祭料・埋葬料
故人が加入していた健康保険組合や労働組合などから支給される葬祭費や埋葬料は、相続放棄しても、支給を受けることができます。
6-4 信託受益権
信託受益権は、信託契約の受益者が信託財産から利益を受ける権利です。相続放棄をしても信託受益権に基づき、信託財産を取得することが可能です。
相続放棄とは別に、信託受益権によって信託財産を受け継ぐことができます。
家族信託の場合、委託者や受益者が亡くなった場合には、受益権が次の受益者に移行するか、残余財産が帰属する仕組みがあります。
7 まとめ:相続放棄する場合でも生命保険金を受け取れる場合が多い
本記事では、相続放棄と生命保険について相続に詳しい弁護士が解説を行いました。
相続放棄をすると生命保険金を受け取れないと誤解している方もいるかもしれません。相続放棄した場合でも、生命保険金を受け取ることができることもあります。
また、相続放棄時に受け取る生命保険金には相続税がかかる場合がありますが、非課税枠を利用することも可能です。そして、生命保険金を受け取った後でも相続放棄は可能です。
相続放棄を検討している方で、生命保険を受け取るかどうか迷っている方のご参考にしていただければ幸いです。
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