相続放棄
1 相続放棄についてよくある悩み
相続が発生した際、相続人は相続すべきか「相続放棄」すべきか悩む人もいるでしょう。相続放棄については下記のような悩みが多いです。
- 相続放棄をするかどうか迷っているが、期限はあるのか。
- 亡くなった父の負債が多く、相続放棄をしたいがどのように手続きをすすめればよいか。
- 全員相続放棄をした後の財産は誰が管理するのか。
- 相続放棄は相続人全員で行うものなのか、1人でも行えるのか。
- 生前に相続放棄はできるのか。
2 相続放棄とは
相続放棄とは、文字通り相続人が一切の相続を放棄することです。
相続人であれば誰でも相続放棄の権利があり、相続放棄をするともとから相続人でなかったものとみなされます。相続が発生した際、最初から相続人として人数に含まれません。
3 相続放棄の流れ・ポイント・注意点
3-1 相続放棄の流れ
相続放棄を行うには、被相続人の住民票が置かれた場所を管轄する家庭裁判所に届出を行います。
届出には、「相続放棄の申述書」が必要です。
相続放棄の申述書は裁判所の様式があり、インターネットでもダウンロードできます。申述書には添付書類が必要で、必要な書類は被相続人との関係で変わります。
共通して必要な書類 |
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被相続人との関係性によって変わる書類 |
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配偶者・子 |
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父母 |
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兄弟姉妹 |
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孫 (代襲相続の場合) |
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これらの書類をそろえて家庭裁判所で相続放棄の申立を行うと、相続放棄に関する照会書が届きます。
必要事項を記入して、家庭裁判所へ再送し、相続放棄の手続きは完了です。審理のうえで相続放棄が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきます。
3-2 相続放棄のポイント
相続放棄をするかどうかの判断ポイントは、資産と借金を差し引きした財産がプラスかマイナスかです。
マイナスの場合は債務超過の状態であり、相続放棄を選択すべきケースと考えられます。
しかし、「財産がプラスかマイナスか現状は不明である。」といった場合もあるでしょう。この場合は「限定承認」という方法をとることも可能です。
限定承認は、プラスの財産とマイナスの財産を差し引きして、財産がプラスになった場合のみ相続し、マイナスの場合はすべての財産を引き継がない制度です。
ただし、限定承認は相続開始を知ってから3か月以内に、相続人全員で家庭裁判所に手続きを行う必要があります。
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3-3 相続放棄の注意点
相続放棄には期限があります。被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に手続きを行う必要があります。
3か月を過ぎた場合、相続放棄の選択ができなくなるので注意しましょう。
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なお、一度相続放棄の手続きを行ったら取消や撤回はできません。
また、すでに被相続人の財産を使っていた場合は相続放棄できません。期限を過ぎたり、相続財産に手を付けていたりした場合は「単純承認」と呼ばれ、自動的に相続人が被相続人の財産を引き継ぎます。
4 弁護士に依頼するメリット
相続放棄の手続きは弁護士に依頼することも可能で、下記のようなさまざまなメリットがあります。
①財産調査をしてもらえ、相続放棄をすべきかどうか専門家から適切な判断をしてもらえる。
②債権者がいた場合の対応や交渉を任せられる。
③手続きに必要な書類集めや申述書の記載を任せられるため、申立にかかる負担軽減になる。
④単純承認となるようなリスクを避けて、相続放棄できるようにアドバイスがもらえる。
5 費用
自分で書類を集めて手続きを行う場合の費用はトータルで数千円になります。
必ず発生する費用は下記です。
- 申述書に貼る収入印紙:800円
- 申立人の戸籍謄本:450円
- 連絡用郵便切手代:数百円
上記に加え、被相続人との関係性から必要となる書類によって、下記の費用がかかります。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票:300円 / 1通
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本:750円
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6 相続放棄についてよくある質問
6-1 相続放棄をした場合に生命保険は受け取れないのか?
生命保険金は相続財産に含まれないため、保険金受取人になっていた場合は相続放棄後も保険金を受け取れます。
6-2 生前に相続放棄はできるか?
相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月の期間です。そのため、生前に相続放棄の手続きはできません。
6-3 相続人全員が相続放棄をした場合、遺産はどうなるか?
相続財産管理人が選任され、財産から債権者への支払を行ったうえで財産がプラスであれば最終的に国庫に納められます。
借金が残る場合は、清算手続きが行われます。
相続人が被相続人の連帯保証人になっていた場合、相続放棄をしていたとしても返済に応じなければなりません。