特別縁故者に対する財産分与|手続きの流れや費用を弁護士が解説!
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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配偶者や子ども、兄弟姉妹がいないなど身寄りもおらず、相続人がいない状態で亡くなってしまうと財産は国庫へ帰属します。
しかし、家庭裁判所に「特別縁故者」と認められれば、法定相続人以外も財産を受け取ることが可能です。
ただし、特別縁故者が実際に財産を受け取れるまでには、時間・手間・費用が必要です。とくに、手続きに必要な相続財産管理人の選任では数十万円以上の費用が発生することもあります。
本記事では、相続に詳しい弁護士が特別縁故者に対する財産分与の制度や、申立を行う際の費用について解説します。
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何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
1 特別縁故者に対する相続財産の分与とは
特別縁故者に対する相続財産の分与とは、亡くなった方にとって特別なご縁のあった人に対して財産を分け与えられる制度です。
この制度を活用することで、法律上や血のつながりがなくても、故人の財産を受け取れる可能性があります。特別な縁故があったと主張する本人が裁判所で申立の手続きを行うことでこの制度を使えます。
ただし、この制度は相続人の不在が大前提の制度です。相続人がいる場合には、相続人が相続するため、特別縁故者の制度を利用することはできません。
そして、必ずしも財産分与できるわけではなく、一部だけの分与になることもあります。公開されている裁判例では、ほとんどのケースで一部のみの分与となっています。
2 特別縁故者と認められる人
特別な縁故者と認められるのは下記に該当する者です。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があったと認められる者
よくあるケースとしては、内縁の夫と妻や被相続人が入所していた介護施設などです。個人だけでなく、法人も特別縁故者と認められるケースもあります。
特別縁故者の細かい条件は法律で定められていないため、特別縁故者に該当するかどうかはケースに応じて家庭裁判所が判断します。
【関連記事】特別縁故者となる要件は?財産分与までの流れを弁護士が徹底解説!
3 特別縁故者の申立手続きの流れ
特別縁故者を主張し、相続財産の分与を申立する手続きは下記の流れです。
- 相続財産管理人の選任
- 債権者・受遺者を探す
- 財産の整理
- 相続人を探す
- 特別縁故者に対する財産分与の申立
相続人を探す期間等が含まれるため、非常に時間がかかり、手続きすべきことも多いです。各手続きについて解説します。
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3-1 相続財産管理人の選任
まずは家庭裁判所で相続財産管理人を選定してもらい、財産の管理や処分ができる人を家庭裁判所が決めます。これは、特別縁故者を主張する人が行う手続きです。
相続財産管理人は財産のリストを作成し、どういった財産があるのかを把握します。専門的知識があり、故人と利害関係のない弁護士などが選任されることが多いです。相続財産管理人の選任には下記の費用がかかります。
- 収入印紙代:800円
- 官報公告費用:4000円程度
- 郵便切手代:数千円(裁判所によって異なります)
- 予納金:10万円~100万円
相続財産管理人の報酬は、遺産から支払われることが一般的です。遺産が少ない場合には申立人が負担し、予納金を納める必要があります。
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3-2 債権者・受遺者を探す
相続財産管理人の選任後、2か月以内に相続人が現れない場合は、さらに2か月以上の公告期間を設けて債権者・受遺者に対して請求の申出を公告します。
被相続人にお金を貸していた人や、遺言書で財産受け取りの約束があった人を探す期間です。これは、家庭裁判所が行います。たとえば、葬儀費用をたて替えた人がいた場合、債権者として申し出ることで葬儀費用の返還が行われます。
3-3 相続財産の整理
財産から借金など債務の清算手続きを行います。この手続きは相続財産管理人が行います。負債が多く、もし財産が残らなかった場合、特別縁故者が受け取る財産はありません。財産が残った場合は、引き続き法定相続人を探します。
3-4 相続人を探す
この段階でも相続人の有無がわからない場合、家庭裁判所は6か月以上の期間を設けて相続人を探すための公告をします。
この期間内に相続人からの申出がなかった場合、相続人の権利はなくなります。法定相続人が現れた場合、特別縁故者が受け取る財産はありません。被相続人の財産は法定相続人へ相続されます。
ここでいう相続人は、養子や代襲相続人も含まれます。
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3-5 特別縁故者に対する財産分与の申立
6か月の期間で相続人が現れなかった場合、ここではじめて特別縁故者に対する相続財産の分与申立を行えます。申立に必要な資料(詳細は後述)を提出すると、裁判所は特別縁故者と認めるかどうかを判断します。
この申立ができる期間は、相続人の不在が確定してから3か月以内です。
特別縁故者と認められれば、相続財産管理人から財産分与があります。残りの財産は国庫へ帰属します。
4 裁判所に提出する資料
特別縁故者が財産分与の申立を行うにあたっては、下記の書類を提出する必要があります。
- 特別縁故者の財産分与の申立書
- 申立人の住民票
- 財産目録書類
- その他書類
その他書類については、被相続人と特別な縁故があったと認められるための証拠を提出する必要があります。
たとえば、被相続人と同一生計であった場合には、同じ住所に住んでいたことがわかる住民票などが該当します。また、メールやチャットの履歴、写真などの記録も被相続人と親密な関係にあったと証明できる資料です。
5 特別縁故者の申立費用
特別縁故者が財産分与の申立を行う際、数千円の手数料等の費用が発生します。
内訳は、
- 申立手数料:800円
- 郵便切手代:数千円(裁判所によって異なります)
です。手数料800円については郵便局等で収入印紙800円を購入し、申立書に貼り付けて提出します。
6 特別縁故者が財産を受け取ったときの税金
特別縁故者が被相続人から財産を受け取ったときの税金については、遺贈を受け取ったものとして考えていきます。
遺贈は、遺言によって財産を受け取ることです。基礎控除額は3000万円です。(ただし、相続放棄があった場合は、相続放棄がなかったものとして基礎控除額を計算します。相続人1人に対して、600万円の控除額が3000万円に上乗せされます。)
特別縁故者が受け取った財産の評価額は、財産を受け取った日を基準日に計算します。相続税の申告期限は、財産分与があったことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。
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7 弁護士に依頼するメリット
特別縁故者の財産分与の制度は、手続きに時間と費用がかかり、相続人がいないことが前提となります。そして、裁判所が認めなければ、特別縁故者は財産を受け取れません。
複雑で長期間かかる手続きをきちんとやりとげるために、弁護士への相談・依頼を検討するのがよいでしょう。
また、法律上の相続人以外の人へ財産を分け与えたい場合は、遺言書を作成しておくのが有効な手段でしょう。気になる場合は弁護士などの専門家に相談しておくことで、相続人以外への遺贈をスムーズに行えるようにサポートしてもらえます。
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被相続人から「財産を渡す」という旨を聞いていても、必ず遺言書に書いてもらうようにしましょう。被相続人に遺言書を書いて欲しい旨を伝えにくい場合も弁護士が間に入り、弁護士から説明してもらうこともできます。
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